そうか・・・いいんだ、兄弟達は助かったんだから。
俺の、長男としての最後の役目として、果たそう。
カラ松は何も言わず、目から涙をこぼしていた。
皆の顔を目に焼き付けて、俺は教室を飛び出した。
冷たい風を顔面に受けながらひたすら走った。
ペタペタペタ・・・
後から足音が聞こえる。
ダメだ、このままじゃ捕まる!
そう思った俺は廊下をひたすら曲がった。
ゴンッ。
転んでしまったのだ。
あぁもうダメだ・・・
走ってくる血鬼が見える。
もう少し皆の顔を見ておけば良かった・・・
でもそんなこと言ったってもう会えないし・・・しょうがないか。
1人で呟いた。
そのうち目の前にやってきた血鬼が俺に手を伸ばした。
俺は目を瞑った。
ドンッ
誰かに押された。
恐る恐る目を開けてみると、青いパーカーが倒れていた。
カラ松だった。血鬼の手が突き刺さっている。
カラ松が身代わりになったのだ。
笑顔で涙を流しながら絶え絶えに話した。
血鬼も驚いたようで、突き刺さっている手を抜いた。
その反動でぐらりと倒れたカラ松を受け止めた。
最後の方は涙声で、言えていたか分からない。
俺の目からこぼれ落ちた涙をカラ松が拭った。
カラ松の声が段々と途切れ途切れになってくる。
俺はこぼれる涙になんの気も払わず、ニッと笑った。
カラ松がにこっと笑った。
可愛い。
そう言い残すとカラ松はゆっくり目を閉じた。
そのうち他の兄弟達が走ってきた。
俺はそう言いながらカラ松の頬をなぞった。
またボロボロと涙が出てきた。
ペタ。
俺の後ろで足音がした。
振り向いてみると、立っていたのは
血鬼だった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。