わたわた、と慌てる來雅と涙を必死に袖口で拭う羽瑠。
さっ、と目元を擦る羽瑠の腕を取り、指で優しく涙を拭いてあげる來雅。
ぽんぽん、と頭を撫でて微笑む姿はまるで優しいお兄さんのようだった。
羽瑠は來雅のその言葉にこくり、と頷けば私の方に歩んでくる。
これ以上 羽瑠の涙を増やしたくなくてなるべく優しく微笑み、答える
尚も座りこんでいる私に視線を合わせるようにしゃがみこめば
ふわり、と優しく抱きしめてくる。
そこに先程までの恐怖はなく、心地の良いものだった。
優しく包み込んだ彼の体温がくれる安心感
さらさらした黒髪から香るのは故意的につけられたものじゃない、シャンプーの自然な香り
頭を撫でてくれる手は他の男子よりも華奢なものでまるで割れ物にでも触るように優しい手つき。
折角止まっていた彼の涙はまたぽろぽろと溢れてくる。
まるで幼い子どもをあやしているみたい。
こく、っと頷く羽瑠。
ぎゅっ、と胸のあたりが苦しくなるようなこの感覚はきっと、
彼の弱い姿を見て、守ってあげたいと思う母性本能からだろう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。