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第13話

10個目の林檎
※注意
この話は、夏芽の彼氏、麗目線でいきます。そのことを理解してからお進みください。
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「なんか、慌ただしい感じで出ていきましたね。何かあったのかな…」

勢いよくドアを閉めて出て行った夏芽を見送った後、リビングに戻って葵さんに聞いてみる。

最初は無言だったけど、しばらくしてから

「…なぁ、お前は前世なんだったと思う?」

「自分がってことですか?そんなことわかるわけないじゃないですか。」

「夢がないなぁ。なんだったと思うって聞いてるんだよ」

前世かぁ

考えたことなかったな。

「人間だったんじゃないですか?でもって音楽が好きだったんじゃないかと思います。でないと今、多分こんなに音楽好きになってません」

真面目に答えすぎちゃったかな。

また、「面白くない」って返事が返ってきそう。

なんて、考えていたけど案外そんなことはなくて。

「お前らしいな」

と返ってきた。

「まってくださいよ!それ喜んでいいんですか!?」

「一応褒め言葉として受け取ってけば?」

「いちおう…って…」

そんな会話をしているうちに、向葵さんが帰らなければならない時間になってしまった。

向葵さんが返ってから、あることを思い出した。

「そうだ、夏芽に用事に間に合ったか聞いとこうと思ってたんだった。」

ラインを開く。

バダバタして出て行ったけど、用事大丈夫だった?
…数時間経ってから見てみたけど既読がつかない。

まあ、別に急ぎで聞きたいわけでもないし大丈夫だけど。

最初はそんなことを思ってた。

けれど、それがどんどん不安に変わる。

あれから数週間経ったけど、何にも返事がない。

向葵さんに聞いてみたけど、お前がわかんないのにわかるわけない、って返されちゃったし。

夏芽の大学の友達にも聞いてみたけど、最近大学にも来てないって言ってたし。

どうしたんだろう。

突然行ったら怒られるかもだけど、何かあったとしたら大変だしな。

僕はそんな不安を抱えたまま、夏芽の家の玄関前についた。

玄関には、鍵がかかっていた。

「まあ、当たり前か」

よかった、合鍵もらっといて。

鍵穴に入れると、軽い音をたてて鍵が開いた。

「夏芽ー?いるー?」

出かけてるのかな。

外に出ようとしたとき、奥の方で小さく物音がした。

「夏芽?大丈夫?…上がるよ?」

返事はなかったけど、、ちゃんと上がるって言ったし大丈夫だよな。

…ていうか電気もつけずに真っ暗で何やってんだろ。

「なつ……わっ!!?」

パチっと電気をつけると、辺りが明るくなった。

暗かったせいで、ソファーで体育座りしている夏芽に気がつかなかったんだ。

夏芽は大きな声を出した僕にも驚かず、ただ顔を膝に埋めていた。

「夏芽?どうかした?」

「…麗、ごめん。…ずっと返事してなくって」

夏芽はか細い声でそう言った。

久しく聞いていなかった恋人の声は、酷く掠れていた。

隣にそっと座る。

「なにかあった?」

その質問に答えてはくれなかった。

しばらくの無言がつづく。

「ねぇ、仕事は大丈夫なの?」

膝に顔を埋めたままの彼女は、恐る恐る僕に聞く。

「うん、今日は特になかった。」

「そっか…」

また、静かな時間が過ぎていった。

そんな時間でさえ、なぜか歌詞とメロディーが絶え間なく出てくる。

そのせいで多分僕は、たくさんのものを見過ごして来た。

それが作詞作曲をしている僕の悪いところだ、なんて最初は思っていたけど。

それを彼女は、ひっくり返すように笑いながら、そんなことない!、っていってくれた。

夏芽は…歌が好きだったんだよね。

ふと、過去に描いた曲を思い出した。

それを、まるで子供に歌って聞かせるみたいに唄う。



『世界がゼロに戻ったなら』

『そんなくだらないことを必死に願った僕がいた』

『僕たちが存在しなかったら今が少しでも変わっていたんだろうか』

『ただ今は、君の言葉に誓おう』

『心が擦り切れるほどの愛をどうか…』



僕が歌い終わった時にはまた、あの沈黙が訪れていた。

夏芽はまだ顔を上げない。

「ココア、入れてこようか」

返事は待たずに、立ち上がった。

そしてキッチンに向か後からで、服の裾を軽く引っ張られる。

いつの間にか、僕の後ろに立っていた彼女の目は、泣いたのか赤くなっていた。

「…いいうた、だね」

僕は微笑んで夏芽と向かい合う。

「この歌、恋愛曲を提供してくれって言われて作った曲なんだ。でも、いつの間にか、頼まれた人へじゃなくて、夏芽へ向けた曲になってた。」

おかしな話だよね、

そういって苦笑いをこぼす。

そして、僕は夏芽を軽く抱きしめた。

腕の中では、夏芽が声を押し殺して泣いている。

「ねぇ、、私…、どうしようもない人間だけど……、それでも好きでいてくれるの…?」

僕は返事の代わりに強く抱きしめた。

夏芽は、泣きながら僕のことを抱きしめ返した。

…ごめんね

と、謝りながら。

夏芽は、結局何があったのかは話してくれなかった。

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りんごあめ
りんごあめ
りんごあめです!よろしくお願いします。}m(_ _)m 好きなものは ・おそ松さん ・ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。 ・カゲロウデイズ ・ナカノヒトゲノム【実況中】 ・銀魂 ・ボカロ ・そらまふ ・うらさか ・天月 ・浦島坂田船 ・96猫 ・クプラ ・あるふぁきゅん+a ・伊東歌詞太郎 ・夏目友人帳 ・蛍火の杜へ ・妄想 ・殺伐シェアライフ ・君の膵臓をたべたい ・殺戮の天使 などです。}(*゚▽゚*) この中で最近ハマってるのは ・歌い手 ・殺戮の天使 ですね}+゚。*(*´∀`*)*。゚+ あ!ちなみに永遠のcrewで、坂田家です!! 吹部でクラリネット吹いてます。♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪ お話できたら嬉しいです。
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