「あーあー…。とうとう見えちゃったか。ごしゅーしょーさま♡w」
そこには、いつの間にか女の子が立っていた。
ねこちゃんは少し唸ってからさっと逃げ出してしまった。
声からして年は私と同じくらいだろうか、フードを被っているからわからない。
フードの隙間から肩につくかつかないかくらいの茶髪と、面白いと言うように歪んだ口が見えた。
「お前は…」
隣で向葵さんも困惑しているようだった。
「あら?突然現れたことに驚かないんだ。まあいいか。…私は魔女」
まじょ…
そんなの、おとぎ話の中じゃないんだから
「『いるわけない』そう思うでしょ?まあそれが今あなたたちの目の前に存在してるんだけど」
信じられない。
疲れているのかもしれない。
けど、私の頭は、不思議に思うくらい彼女の存在を認識した。
それは彼もだったようで、それ以上彼女の存在については聞こうとしなかった。
恐る恐る聞いてみる。
「どうして、魔女さんがこんなところに?」
「ん?それはあなたたちが1番わかってるんじゃないの?」
2人ともしばらく黙っていると魔女さんは短いため息をついて話し始めた。
「あなたたち、今、前世を見たんだよ」
見た?
それって、さっき頭に流れてきた。
「この世には面白い人間がいる。それは、過去を、自分の前世を見ることができる人間。それがあなたたち。」
頭に風景が流れてきたのは向葵さんも同じだったんだ。
「けど、それを見るには条件がいる。それは、前世自分と親しかった人物に触れること。」
「それじゃあ…」
人差し指を立てて説明していた彼女は、いやらしい笑みを見せた。
「そう、あなたたちは、前世恋人同士だった。だから見えた。前世がね」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。