第16話

13個目の時計
53
2018/01/22 11:28
どうしような

今日はもう大学終わっちゃったし。

私たちに起こる不幸とやらを探しに…

ん?ちょっと待って。

さっきのケーキ屋さんめっちゃ美味しそうだった。

よってこ!

不幸探しは…

とりあえずケーキ!←

「こんにちはー」

扉を開けると、元気な店員さんの声が響いた。

大変だなぁ…

軽く挨拶をすると、

「どれになさいますか?」

と聞かれた。

うーん、私モンブランが好きなんだよなぁ…

あ!これ美味しそう!

私が見つけたのは、なんの変哲もないシンプルなモンブラン。

うん!

シンプル・イズ・ベスト!

指をさして言う。

「『これください』」

「え…?」

私と同時に聞こえた声。

その人は私の選んだものと同じものを指差していた。

「え?あ、最近よく会うな。」

それは、向葵さんだった。

「ほんとですね…w」

私たちは、ケーキを買って店を出た。

「向葵さん、モンブラン好きなんですか?」

「うん。お前も?」

「はい!モンブランなんこでもたべれますよ」

「モンブラン好きそうな顔してるもんな」

「ええっ!?それ喜んでいいんですか!?」

「うーん、」

考えるのか…!!w

たわいもない話をしながら歩いていく。

どうやら途中まで帰り道が同じようだ。

「向葵さんは、私たちが付き合ってたこと知ってたんですか?」

「え?あー…だってあいつ何かとお前の話ししだすしw」

「えー……w」

いつからだろうか、いつの間にか、鼻歌が漏れていた。

「なあ、その歌って…」

「え?ああ、これは…」

そう言って、私は歌詞を入れて歌う。

こんなに清々しい気持ちで歌ったのは何年ぶりだろう。

あの日、私が暗闇のどん底にいた時、麗が歌ってくれた曲。

「『世界がゼロに戻ったなら』って言う曲なんですって。この曲ってなんか…心にすっと入ってきて、落ち着きます。麗、凄い曲作りますね。」

「………」

「…?向葵さん?」

「あ、ごめん。俺も、その曲一回本人が歌ったのを聞いたことある。素直でいい曲だなって思ったよ」

「そうですか?なんか歌詞がひねくれてません?」

「いや、あいつにしては、随分とまっすぐな思いを謳った歌詞だよ」

そういえば、私、麗の曲そんな知らない。

「なあ、杜」

「待ってください!」

そうだ。言いたかったことが、

「なんか、私だけ名前って距離ありません?杜って呼ばれるのもいいんですけど…」

あ…

分かれ道についてしまった。

「ここから別ですよね、私こっちなので。では」

「うん、じゃあな。夏芽」

向葵さんは、いつもの瞳でそう言った。

「……!?、、あ、はい!じゃあ!」

私はその場から走り出した。

全速力で。

家まで、ずっと。

なんで?

それは、不思議だったから、

不思議で仕方がなかったから、

こんなに、心臓が擦り切れそうなのが。

そして、家に着いてから思い出す。

「ああ、、イブのこと、相談にのってもらうの忘れてた」

そのまま私はベットに仰向けで倒れる。

このまま、眠ってしまってもいいかもしれない。

私は、またノイズで視界が歪んでいくのも気にしないで、目を瞑った。

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