どうしような
今日はもう大学終わっちゃったし。
私たちに起こる不幸とやらを探しに…
ん?ちょっと待って。
さっきのケーキ屋さんめっちゃ美味しそうだった。
よってこ!
不幸探しは…
とりあえずケーキ!←
「こんにちはー」
扉を開けると、元気な店員さんの声が響いた。
大変だなぁ…
軽く挨拶をすると、
「どれになさいますか?」
と聞かれた。
うーん、私モンブランが好きなんだよなぁ…
あ!これ美味しそう!
私が見つけたのは、なんの変哲もないシンプルなモンブラン。
うん!
シンプル・イズ・ベスト!
指をさして言う。
「『これください』」
「え…?」
私と同時に聞こえた声。
その人は私の選んだものと同じものを指差していた。
「え?あ、最近よく会うな。」
それは、向葵さんだった。
「ほんとですね…w」
私たちは、ケーキを買って店を出た。
「向葵さん、モンブラン好きなんですか?」
「うん。お前も?」
「はい!モンブランなんこでもたべれますよ」
「モンブラン好きそうな顔してるもんな」
「ええっ!?それ喜んでいいんですか!?」
「うーん、」
考えるのか…!!w
たわいもない話をしながら歩いていく。
どうやら途中まで帰り道が同じようだ。
「向葵さんは、私たちが付き合ってたこと知ってたんですか?」
「え?あー…だってあいつ何かとお前の話ししだすしw」
「えー……w」
いつからだろうか、いつの間にか、鼻歌が漏れていた。
「なあ、その歌って…」
「え?ああ、これは…」
そう言って、私は歌詞を入れて歌う。
こんなに清々しい気持ちで歌ったのは何年ぶりだろう。
あの日、私が暗闇のどん底にいた時、麗が歌ってくれた曲。
「『世界がゼロに戻ったなら』って言う曲なんですって。この曲ってなんか…心にすっと入ってきて、落ち着きます。麗、凄い曲作りますね。」
「………」
「…?向葵さん?」
「あ、ごめん。俺も、その曲一回本人が歌ったのを聞いたことある。素直でいい曲だなって思ったよ」
「そうですか?なんか歌詞がひねくれてません?」
「いや、あいつにしては、随分とまっすぐな思いを謳った歌詞だよ」
そういえば、私、麗の曲そんな知らない。
「なあ、杜」
「待ってください!」
そうだ。言いたかったことが、
「なんか、私だけ名前って距離ありません?杜って呼ばれるのもいいんですけど…」
あ…
分かれ道についてしまった。
「ここから別ですよね、私こっちなので。では」
「うん、じゃあな。夏芽」
向葵さんは、いつもの瞳でそう言った。
「……!?、、あ、はい!じゃあ!」
私はその場から走り出した。
全速力で。
家まで、ずっと。
なんで?
それは、不思議だったから、
不思議で仕方がなかったから、
こんなに、心臓が擦り切れそうなのが。
そして、家に着いてから思い出す。
「ああ、、イブのこと、相談にのってもらうの忘れてた」
そのまま私はベットに仰向けで倒れる。
このまま、眠ってしまってもいいかもしれない。
私は、またノイズで視界が歪んでいくのも気にしないで、目を瞑った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!