第12話
9個目の月
この時間に、公園には誰もいないようだ。
ベンチに座って一息ついた。
「ねぇ、あの人に言うわけ?」
「なにを?」
「あなたたちの前世のこと」
「…私、麗に隠し事したくないの」
「うそはやめてよ」
「うそ…?」
うそ、なんかはついていない。
隠し事を彼にしたくないのは本当だ。
「彼に隠し事をするのが嫌なんじゃない。誰かに隠し事をしている自分が嫌なだけでしょ」
「そんな…ことは…!」
「じゃあ、言い返せる?無理でしょう?ねぇ、あなた…」
鈍器で頭を殴られたような気がした。
目の前がクラクラする。
いや!!
言わないで!!!
お願いだから!!
お願いだから…
よくわからない感情が胸を締め付ける。
そんなこと、痛いくらいに、わかってたのに。
「あの人のこと、本当に好きなの?」
「ああ…あ……あぁ…」
耳を塞ぎたくても、それができなかった。
言いたいことが、表せなかった。
ただただ、
気がついてしまった、それだけで
自分がこんなにも壊れていく。
「違う…私は、ちゃんと…」
「『ちゃんと』なんなの?あなたが愛しているのは所詮自分でしょ?」
「ちがう!…ねぇ、違うよね?」
そんなこと聞いても、返事が返ってこないことぐらいわかってた。
「まあ、私はどっちでもいいわ。あなたがあの人に伝えても伝えなくても。あー、そうだった。あなたあの人に伝えるんだったっけ?」
彼女の、イブの顔がずいっと近く。
少しだけ幼げの残る顔が、楽しそうに歪んでいた。
「言いにくいようだったら私が言ってあげる。あー、そうだ。私が言えばいいわ。そうしようか?じゃあ早速言ってこようかな」
「まって!!!お願い!!やめて!!」
気がついたら、私は彼女を止めていた。
結局私はなにをしたいんだろう。
「……なに?」
「………」
「ハァ…、どっちでもいいけど、このままだとあの人も不幸になるよ」
『つまんないの』
彼女はそう言った気がした。
そうして、気がついた時には公園には私だけしかいなかった。
2人のユーザーが応援しています
作者を応援しましょう
シェア&お気に入りしよう!
この作品をお気に入りに追加して、更新通知を受け取ろう!
恋愛の作品もっと見る
公式作品もっと見る
いじわる警官に甘く護られて☆
現役高校生モデルの栞那は熱狂的なファンからの度重なるストーカー行為に悩んでいた。 ある日、撮影が終わって帰宅すると、鍵を閉めて出たはずのマンションが荒らされていて……!? ストーカー対策室対策第1係の新米警察官、来栖俊太(23歳)に護衛をお願いすることに。 「こんな新米警官で本当に大丈夫なの?」 「まぁ、なるようになる」 いじわるで、適当な来栖に不安は増すばかり。だけど、気付けば来栖と一緒に過ごす時間がどんどん増えて――。 警官×モデルのちぐはぐラブ♥ イラスト/nira.
14,061437384かわいい花満くんが好きでした!
可愛いものが大好きな高校二年生・松葉花音は、明るく可愛いクラス人気者・花満周に憧れ、「花」というフォルダー名の花満写真集をスマホ内に作っていた。しかし、告白現場を撮ってしまったことをきっかけにそれがバレてしまう! そして明らかになる花満くんの違う一面……。 イラスト:ハマジ マナ
11,040263402溺愛系ケモノ男子とクールな幼なじみに迫られてます!!
ある日、夜道で不審者に襲われそうになったまりあを助けてくれたのは、獣の耳に尻尾が生えたオオカミ男の紅狼だった。 紅狼は出会って早々に「お前が好きだ」と告白してくるが、まりあの幼なじみの銀は罪を犯した人外を狩るハンターとして紅狼を敵視して…!? 溺愛オオカミVSクールな幼なじみハンターとのトライアングルラブ。 イラスト/nira.
1,91515592