【じんたんside】
眼が覚めると、さっきまで着ていた服と違う服になっていた。
そう言った声に振り返ると、優しい笑顔でテオくんがこちらを見ていた。
俺も精一杯の笑顔で返した。
…そういえば、えっちしちゃったんだよな…
…ふぁぁああ…////
そう認識した瞬間、顔が熱くなるのを感じた。
そう言って近づいてきたテオくんは俺をぎゅ、っと抱きしめると
そう、耳元で囁かれた。
俺は照れ隠しにそう言って、軽く叩いた。
時計を見ると、15時だった。
そう言って立とうとした瞬間、
腰が死ぬほど痛い。
テオくんは申し訳なさそうに俺を見ると
返事の最後の方が小さくなってしまった。
セックス
その単語が出てきた瞬間やけに生々しくて
確かにしたのだけれど。夢のように感じた。
疲れていたのか、俺はすぐにまた寝てしまった。
.
………夢を見た。
夢の中にはテオくんが出てきて、でも、テオくんの隣には俺じゃない誰かが立っていた。
…どこかで見たことある顔………
あっ、テオくんの写真に写ってた子だ…!
…え、その子とどういう関係なの…?
俺は言葉が出なくて、その場に立ち尽くしていた。
俺は動けないのに、声が出ないのに、テオくんとその子は離れていってしまう。
やっと声が出た………!
テオくんは振り返ってくれた。
_______でも。
______え?
テオくんは俺の言葉を遮った。
なに…?
思考回路が停止してる。
……うそでしょ?
嘘って言って、テオくん。
むりだよ、なんで、なんで……っ?!
……ん、…たん、…んたん……
……誰か俺の名前を呼んでる。行かないと…
……あれ?俺いまテオくんに振られたばっかじゃなかった?
…まぁ、いいか……
.
はっ、
……あれ?テオくんがいる…
何が何だかわからないまま言葉が出てくる。
ただわかっているのは、胸の痛みだけだった。
…さっきのは夢?現実?
俯いて、自分の中から出てくる言葉を、ただただ声にして喋っていた。
そっと上を向くと、悲しそうな顔のテオくんがこちらを見ていた。
そういって抱きしめて、背中をさすってくれた。
強く抱きしめられた。
涙が止まらなかった。
いつだって、どこかで恐怖を感じていた。
世間からは認められない。子供も作れない。セックスだって俺じゃない方が気持ちいい。
俺じゃなきゃダメだって思われなきゃ。
女の子になくて、俺にはあるものでテオくんのそばにいて、隣に立っていて恥ずかしくない存在でいなくちゃ。
どんなに繋がっても、どんなに気持ちを伝えても、ずっと心に穴がぽっかりと空いたように感じていた。
確かにそう言われれば、言われてない。
そう思うと、愛しくて、愛しくて。
俺はぎゅぅうっと抱きつき返した。
.
テオくんは飲んでたお茶を吹き出した。
ぼんっと音がしそうだった。
ちゅ
急にキス…!!!!
えっちの心配もないみたい。
これからもラブラブで生活してこうね。
テオくん、大好き!!
……それじゃ、また!ピースっ!
〜END〜
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!