今日は月曜日。
本当なら、学校に行かなくちゃいけない。
だけど、制服も何もない私は学校に行くことができなかった。
「俺も今日は休むから、服でも買いに行こう。平日だから人少ないし」
吉岡先輩のその言葉に頷き、私は母にLINEを送る。
そして荷物をまとめるために、一旦家に帰ることにした。
「もしもし?…… 俺今日学校休むね。… まあ、そんな感じ」
吉岡先輩に "行ってきます" と伝えようとしたら
誰かと電話をしていた。
だから吉岡先輩の肩をトントンと叩き、口パクで伝えることにした。
( い っ て き ま す )
玄関へ向かおうとすると、後ろから腕をつかまれた。
吉岡先輩はまだ電話中だ。
「… え、もうつく?… じゃあおりとくわ」
私はそのまま、吉岡先輩に手を引かれ
マンションのロビーへ連れて行かれた。
自動ドアの向こう側に、赤い車がとまっているのが見えた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!