少し重いドアを押した草木の番人は、左の方向に曲がり、植物達の中に消えた。
私もドアを続けて押し、そっと足を踏み入れる。
少し歩くと、草木の番人の言う通り、軽い石段の上に、前に見たガーデン用の白い椅子とテーブルが置いてあった。
テーブルの上には前とは違う花が1輪、白くて全体的に細い花瓶に指してあった。
一輪の花に顔を近づけて、その花弁をじっと見つめる。
なんとも言えないような複雑な混ざりが特徴的な花だった。
荷物を下ろし、白い椅子に言われた通り腰をかける。
分かってはいたが、周りは花や草、木でいっぱいだ。
なんだろう、どちらかというと賑やかな場所も好きなんだけど…。
私は花に少し笑ってから、右手で頬杖をつく。
声をした方に振り返る。
もちろん、そこには草木の番人が立っていて、手にはトレーが乗っていた。
私が少し驚くと、草木の番人が軽い石段に上がり、トレーをそっとテーブルの上に置く。トレーの上にはティーポットとジャムクッキーが少しと、2つのティーカップ。
草木の番人が手にした透明なガラスのティーポットに思わず声に出てしまった。
中には紅茶が入っているらしい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。