第42話

小さなバスケットケース と ルー.
392
2018/03/25 22:27
植物園の外を出ると、少し涼しく感じた。
お日様がぽかぽかと気持ちがいい。
私は花のアーチのある方向へと角を曲がると…

『ドンッ!』

大きな体にぶつかってしまった。
その瞬間、どこか、いい匂いがする。
あなた

す、すみません!

ベルナルド
いえ、大丈夫ですよ。すみません、急いでいたもので…
あなた

そうだったんですか。

ぶつかったのは、小さなバスケットケースを右手に持ったベルナルドさんだった。
ベルナルド
すみませんが、ルーを見ませんでしたか?
あなた

ルー?

私はルーが誰だか分からなかった。
すると、ベルナルドさんが、「前髪の長い子です。」と言った。
思い返してみるが、先程までに会ったのは草木の番人だけだったが、前髪は揃えられたものでは無かったものの、長くは無かった。
あなた

いや、分からないです。

ベルナルド
そうですか…
私は昨日のお礼を口に出すつもりだった。
しかし、それは本人によって阻まれてしまった。
あなた

あの

ベルナルド
すみません、ナギカワさん…って言うのもあれなので、下の名前でもいいですか?
あなた

あ、はい

ベルナルド
では、あなたさん、
何故だろう。
ものすごくドキッとした。
優しく笑うベルナルドさんの口から、私の名前が出てきた。
家族からしか呼ばれたことの無い、下の名前。

あなたさん、あなたさん、あなたさん…か…。

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