植物園の外を出ると、少し涼しく感じた。
お日様がぽかぽかと気持ちがいい。
私は花のアーチのある方向へと角を曲がると…
『ドンッ!』
大きな体にぶつかってしまった。
その瞬間、どこか、いい匂いがする。
ぶつかったのは、小さなバスケットケースを右手に持ったベルナルドさんだった。
私はルーが誰だか分からなかった。
すると、ベルナルドさんが、「前髪の長い子です。」と言った。
思い返してみるが、先程までに会ったのは草木の番人だけだったが、前髪は揃えられたものでは無かったものの、長くは無かった。
私は昨日のお礼を口に出すつもりだった。
しかし、それは本人によって阻まれてしまった。
何故だろう。
ものすごくドキッとした。
優しく笑うベルナルドさんの口から、私の名前が出てきた。
家族からしか呼ばれたことの無い、下の名前。
あなたさん、あなたさん、あなたさん…か…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。