第73話

期待 と 鐘の音.
328
2018/03/15 09:18
ふと、私は馬鹿な事を考えてしまった。
残り少ないハーブティーを見つめる。

誰が差し出したかも分からないような、このメモ用紙に期待をしてしまった。
例えば、これを差し出したのが魔物だとしたらどうなるだろう。
きっと、それは危険だけど、今の私の証明するのにもって来いの案だ。
その魔物から自分の身を完全に守れるのが前提になるけど。
草木の番人
私がハーブティーから目を離すと、草木の番人がこちらを見ていたのに初めて気づく。
あなた

どうしました?

草木の番人
いや、別に。
そう言うと、学校にある1番高い塔から鐘の音が鳴り響いた。
気づけば、もう夕方になっていたらしい。
窓から差し込む光は先程よりもオレンジの色が増している。
あなた

すいません、長居させてもらっちゃって…(汗)

草木の番人
うん。
あなた

では、私は、これで。

私はルーズリーフと小さなメモ用紙をバッグに入れると、席を立つ。
椅子を入れて、淡々と歩き、扉の前で草木の番人に向かって軽くお辞儀をした。
初めて会った時と同じで、草木の番人はあまりこちらを見ていなかった。

重い扉を押す。
草木の番人
あのさ、
私の扉を押す手が止まる。
草木の番人
敬語やめてよ。
あなた

…でも、草木の番人さんは私は入学出来ないって思ってますよね?

草木の番人
まぁ。
あなた

それに、名前もまだ教えてもらってません。

草木の番人
…分かった。
それはどちらの『分かった』だろう?
『分かった、名前を教えよう』という意味なのだろうか。

答えはすぐに出た。
草木の番人
何も言わなかった。
ただ、少しだけ軽く手を振っていた。
私は、(なぁんだ)と思い、お辞儀をして返す。
そして、強く扉を押した。
今度はちゃんと、私が外に出られるように。

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