第4話

余裕のない顔 ※テオside
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2018/01/20 20:06
テオ
可愛すぎるって…
やばい、やばいやばい。何だよあの笑顔。
藤枝ってあんな風に笑うんだ。

さっきからずっと藤枝の笑顔を見た時から胸のドキドキが止まんなくて、トイレに逃げ込んだけど…

やっぱり俺、



藤枝が好き。
ていうか一目惚れしてたっぽい。
初めて藤枝と出会った時、俺は無意識に店を出る藤枝を追いかけてた。

そこから気をぬくと藤枝の顔が頭に浮かんで…
でもこの気持ちは絶対に言わないようにしよう。
ずっとずっと、俺の心の中にしまっておこう。
数分後、胸のドキドキが落ち着きトイレから出た。リビングに戻ると俺のトイレの時間が長かったせいか藤枝は眠っていた。
テオ
え、藤枝…?
起こそうとも思ったけど、さっき見た寝起きの顔からして寝不足っぽかったし起こさないほうがいいよね。

気持ち良さそうな寝息たててるし。
座って眠ってる藤枝の隣にすわる。
静かな部屋には、俺の息づかいと藤枝の寝息だけが響いてた。
…可愛い寝顔だなぁ。その寝顔は、起きてる時の余裕そうな表情とは裏腹に、少し微笑んでるものだった。
テオ
…今なら、大丈夫だよね
俺はゆっくり手を伸ばし、藤枝の頬に触れる。
少し冷たいその肌はどこか寂しさが伝わってくる。
じん
んん…
テオ
うわ、
藤枝は寝返りを打った後、再び寝息を立てる。
あぶね…起きたのかと思った。
数分後、藤枝が目を覚ました。
寝ぼけてるのか俺がいることを忘れているようだった。
あくびをしながらトイレに向かう藤枝。

数分後リビングに戻ってきて、藤枝は俺の姿を見つけると目を丸くし驚いた。
じん
あれ…俺寝ちゃってたのか。
じん
…まだいたんだね
極力驚きを表に見せないようにしてるのが見え見え。
さっきはあんなに目丸くしてたのに今じゃ、別にびっくりしてませんよ〜みたいな表情。
可愛いなぁ、なんて思っていると藤枝が少しよろけているのが目に入った。
じん
うわわ…
テオ
え、藤枝?どした?
じん
いや、ちょっと頭がクラクラするだけだから大丈夫。
そういい、藤枝は辛そうにソファに腰掛けた。
いやいや…絶対大丈夫じゃないでしょ。
俺は自分の手を藤枝のおでこにあてた。
びっくりしてるようだったけど、反応する余裕もないみたいだった。
テオ
ちょ…熱くね!?
じん
ええ?大丈夫だよ
テオ
ばか、これで大丈夫なわけないだろ!ちょっとそこで横になってて?
大人しく横になる藤枝を横目に、俺は冷蔵庫から冷えピタを取る。
冷えピタの場所を知ってたのは、さっき藤枝がジュースを取り出してる時に、冷えピタが中にあるのを見たから。
早歩きで藤枝のところに戻り、辛そうに呼吸を乱してる藤枝のおでこに冷えピタをはる。
じん
んやぁ…つめた、
いつもと違う、余裕のない藤枝を見ると再び胸のドキドキが止まらなくなった。
でも今はそれどころじゃないし…
テオ
…あ、お母さんとかいつ帰ってくる?俺それまでここにいるよ??
じん
…お母さんなんて、帰ってこない
え…?

小さく呟く藤枝を見つめる。
テオ
どういうこと?
じん
俺いっつも一人だから。親なんて家に滅多に帰らないし。
じん
だから寺島くん帰っていいよ、もう高校生だし一人で大丈夫だから。
藤枝の表情は、何かを訴えているようだった。
テオ
…いやだ、俺ずっとここにいるわ。
じん
は?
テオ
親帰ってこねえんだろ?なのに帰れるわけないじゃーん。
わざと明るく言う。藤枝は俺を見て大きなため息をつき「ばかじゃないの」と呟いた。
テオ
じゃあ俺、コンビニで薬買ってくるからちょい待ってて?
じん
え…
テオ
ん?
じん
あ、いや別になんでもないよ。
じん
早く買ってきて
テオ
上からだなー笑
テオ
んじゃ、何かあったら連絡してねー
じん
…い
テオ
え?
じん
いってらっ、しゃい…
藤枝は少し気まずさそうに呟いた。その姿がなんとも愛くるしくて、俺は微笑み藤枝を見つめる。
じん
…なに、いいから早く行って
テオ
はいはい、いってきまーす
俺は幸せな気分で玄関の扉を開けた。
あんな事になるとは思いもせずに___

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