第6話

第5話
1,879
2021/07/02 21:52
私の"最後のお願い"に、蓮斗はしばらく黙った後。
蓮斗
...ごめん。すぐには答えられない。
少し、考えさせてくれないかな
困ったように笑って、そう言った。
結唯
ー分かった。こちらこそ、急に
こんな事言ってごめんね
突然言ったし、内容も内容だから無理もない。
もちろんだと頷き、謝る。
蓮斗
...大丈夫。今日の所は帰るな。
お邪魔しました
ゆるゆると首を振り。
謝る事じゃ無いと言ってくれた蓮斗を、外まで見送って。
結唯
こちらこそ。わざわざ来てくれて
ありがとうね、また明日の朝に
蓮斗
ーあぁ。じゃな
結唯
はーい、またね!.........
姿が見えなくなると、私の顔から作り笑顔が消える。
結唯
(やっぱり、言うべきじゃ無かったかな)
あと3ヶ月しか生きられない時間を、
片想いに費やすなんてと呆れられたかもしれない。
尚更、彼には好きな人がいるのだから。
結唯
(断られたら、諦めよう)
そう心の中で決めて、返事を待っていた私。
夜になって、彼からLINEがあった。
蓮斗
片想いの件だけど
結唯
うん
蓮斗
いいよ。片想いしてよ、俺に
まさかの了承の返事に、驚きを隠せない。
結唯
...本当にいいの?
蓮斗
想われる事は嬉しいから。
それに...したいんだろ?片想い
好きな人がいるからと、てっきり振られる(?)
ものだと思っていたのに。
結唯
そうだけど.......(もしかして)
結唯
(私がもう...長くない事を知っているから?)
これが理由なんだとしたら、蓮斗は優し過ぎる。
結唯
...分かった。ありがとう。
楽しむよ、片想いを笑
蓮斗
おおw
楽しむような物でも無いけどw
結唯
良いの!
私は『今』を全力で楽しむって決めたから!
そして、蓮斗の優しさに引きずられるような形で。
蓮斗
はいはいww応援してるよw
結唯
...なんか余裕だね?悔しい...
私の、『擬似片想い』が始まった。
ー翌朝。記念すべき片想い1日目。
結唯
よーし、絶好のスタート日和!
新しい事を始めたくなるような空に、私の顔も綻ぶ。
結唯
今日の目標は.....
『彼の格好良い所を、3つ以上見つける』事。
結唯
(ちゃんと恋する為に、頑張るぞ...!)
イマイチ頑張る方向がズレている気がしたが、
気合いを入れて、蓮斗が出てくるのを待っていると。
蓮斗
...お待たせ。本当にやるのか?片想い
ぽん、と肩を叩かれ、振り向くと。
心配そうな顔をした蓮斗。
結唯
...蓮斗!おはよ、全然待ってないよー
やるに決まってるじゃん!
今更やめる理由も無いと言うと。
蓮斗
...............そっか、分かった。頑張れよ
一瞬だけ頭に手が置かれ、軽く撫でられて。
結唯
.......っ、うん。頑張るよ笑
その瞬間に高鳴ってしまった鼓動。
気づかなかったフリをして、笑った。

プリ小説オーディオドラマ