翌日。
13時ちょうどに、奏さんと孝太さんは現れた。
2人とも、元気なフリをしているけれど。
やっぱり少しだけ、声が沈んでいて。
俺も隠し切れて居ないんだろうな、なんて思いながら。
お礼を言って、ついていく。
慣れた足取りで院内を歩けば、あっという間に病室の前。
もう扉の先に、彼女の笑顔は無い。
目尻に滲んだ涙を慌てて拭いながら、
1週間振りの病室を見渡す。
小さい頃、初めてプレゼントしたウサギのぬいぐるみも。
励ましに来てくれた日のカーディガンも。
ここだけ時間が止まったように、そのままだった。
奏さんの呟くような声。
それを合図に動き出す俺に、孝太さんから声が掛けられて。
返事をすると、優しい笑顔で言われた。
欲しい物があったら、持って帰って良いよ、と。
もちろん本心としては持って帰りたい。
でも、2人に我慢させるのは違う気がして。
遠慮しない事を約束して貰った。
窓際に沢山飾られた写真を、丁寧に箱に入れて行く。
どの写真の結唯も、楽しそうに笑っていた。
俺はと言うと、彼女を見つめている物ばかりで。
幼馴染の鈍さを、今更になって再確認されられる。
思い出を振り返りつつ、ベット横の引き出しを開けて行く。
そして。4段ある内の最後の1つに、"それ"は入っていた。
探して欲しいと頼まれた俺宛の手紙。
淡い桃色の便箋の表面には、見慣れた結唯の字。
見つけられたと言う嬉しさ。
中を見なければ行けない恐怖と、責任感。
ちゃんと見る義務があるのは、分かっているけれど。
.......これを見てしまったら。
彼女の死を、受け入れなくては行けない気がするから。