第36話

第35話 結唯side・蓮斗side
1,117
2021/07/03 07:50
病院から少し離れた、『ある物』の名所として有名な公園。
結唯
着いた.........
その場所に、また約束を破り。
病院を抜け出して来てしまった私。
呼吸を整え、処方されている痛み止めの薬を飲みながら。
何十本にも連なって居る桜の木を見上げ、ため息を吐く。
結唯
まだ咲いてない.....か。
そうだよね、まだ3月なのに笑
今日、私がここに来た目的は一つ。お花見をする為。
けれど、3月の半ばの今。
例年と同じような気温が続く中で、
桜が咲いてくれる訳が無くて。
ガッカリとした、弱々しい笑みが零れる。
結唯
.....もしかしたらって思ったんだけどなぁ...
見つかる前に早めに帰らないと、と車椅子を反転させた私。
結唯
(.......あれ?誰か...)
願い通り、誰にも知られず戻る事は。
結唯
(.........こっちに向かって来てる?)
出来ないようだ。
.................................。
結唯が居ない事に気づいてから早30分。
蓮斗
...また、倒れてるとかじゃ無いよな.....っ
リハビリテーション科にも行った。
受付にも行った。
ナースステーションにも行った。
蓮斗
(何で誰にも、
何も言わないで行くんだよ...!)
普段から通っているお陰で、俺の事を知っている人は多く。
すぐに調べてくれたけど、今だ誰一人として。
結唯の居場所を知る人は出て来ない。
蓮斗
(まさか、病院内に居ない?)
他の患者にぶつからないよう、注意されないように。
ギリギリのスピードを保って探し回りながら、苛立つ。
__あいつは、幼馴染の三笠結唯は。
蓮斗
(いつも...お前は、こうだよな)
人の内側には不快にさせない入り方をして、心を救う癖に。
自分の事は全部1人で抱え込んで。
裏側に踏み込ませてくれない。
蓮斗
(喜怒哀楽が分かりやすいのに
何考えてるか見当も付かない時あるし)
.....俺は、きっと悔しかったんだと。
蓮斗
(ずっと笑ってて、辛くない訳ないのに
意地を張って強がるし)
今ようやく気づいた。
弱味を見せずに戦う結唯に、憧れていたから。
蓮斗
(そろそろ、弱い所見せても誰も怒らないよ)
僅かな怒りは、気づけば心配に変わって居て。
今度は俺が結唯の心を救いたくて。救わせて欲しくて。
蓮斗
(世話が焼けるよな.......俺もだろうけど)
そう決意した時に限って、彼女は目の前に居ない。
蓮斗
(...やっぱ、嫌いになれる所も。
憎める所も無いな)
"好き"を自覚して苦笑した、その時。
いつかの会話を思い出した。

プリ小説オーディオドラマ