第30話

第29話
1,194
2021/07/03 07:39
目が覚めると、病室に1人では無かった。
結唯
(.......蓮斗...ぐっすり寝てる。
ずっと付き添っててくれたのかな)
壁に寄りかかって眠る彼の顔には。
まだ、あどけなさが残って居て。
結唯
(.....ありがとう)
そっと、頭を撫でる。
結唯
(小さい頃、蓮斗が泣いちゃった時。
こうしてたなぁ...)
結唯
(見守って居られるのも、あと少し。)
私が居なくなった後の日々を、幸せに過ごせるように。
結唯
(出来る事、全部。やって行こう)
そう、静かに微笑んだ時。
私の気配に気づいた蓮斗が、身じろぎして。
蓮斗
.....結唯.....起きてたのか?
ゆっくりと開かれた目と、視線が重なる。
結唯
(...きっと、ちゃんと寝れて無いんだ)
蓮斗の寝起きが悪い時は。大抵、寝不足気味。
結唯
うん。少し前に起きた。
ごめんね。また迷惑、掛けて...
夜中でも来てくれたんだと嬉しい反面。
あと何回こういう事があるのかなと俯く。
___すると。
蓮斗
掛けろよ、迷惑。.....幾らでも。
結唯
___!
優し過ぎる言葉と共に、抱き締められる。
蓮斗
結唯は周りを頼らな過ぎ。
皆、お前の味方なのにさ?全くw
結唯
_み、かた?
戸惑いを隠せないまま、聞き返すと。
蓮斗
そう。味方。
だから、落ち着いて聞いて欲しい。
抱き締められる腕の力が強まり。
蓮斗の声が、真剣味を帯びた物に変わり。
蓮斗
_結唯は.....もう二度と歩けないらしい。
...100%の確率で
やがて告げられた言葉を、私は受け入れたくなくて。
冗談だって、笑って欲しくて。
結唯
嘘、嘘だよ.....ねぇ、蓮斗。嘘だよね?
何度も何度も、問いかけるけど。
蓮斗
_ごめん...何も出来なくて、ごめん。
帰って来るのは、謝罪の言葉だけ。
結唯
嘘だよ、だって...この前まで少しは.....
身体が、震え出す。
一度は覚悟を決めたはずの、死への恐怖が。
結唯
やだ。やだ!やだ...!
私、死にたく無い...!
私を飲み込もうとしていて。
蓮斗
結唯.....、俺はここに居るから!落ち着け!
彼の声に、救い出される。
結唯
.......っ、、私、もう死ぬの?
あっという間にモノクロに変わった世界で。
蓮斗
すぐじゃない。
てか、俺が死なせない。側に居る。
結唯
でも...........
蓮斗
お前が嫌がる位、側に居て。
ありったけで守るから。
彼だけが、鮮やかに輝いて居て。
結唯
私が蓮斗をウザがる日なんて来ないよ笑
今更になって、気づいた。
蓮斗
ほんとかよww
そんなこと言って3秒後にはウザがってそう...
支えられていたのは。
前を向いて歩く勇気を貰っていたのは。
結唯
蓮斗の中の私って一体.....
私の方だったのだと。

プリ小説オーディオドラマ