市の総合病院で、とある病気の診断結果を待っていた私。
懐かしい記憶が蘇り、1人苦笑する。
せめて"誓い"を果たすまでは、と呟いた時。
院内放送で自分の名前が呼ばれた。
『三笠結唯さん。第2診察室にお入りください。』
不安と緊張を混ぜたような感情のまま、診察室の扉を開け。
先生の前の椅子に腰掛ける。
悲壮な先生の顔に、背中が凍りついた。
やめて。何も無かったと言って。そう願ったけど。
私の願いは、届かない。
淡々と、私に現実を突きつけた先生。
あと4ヶ月で卒業なのに。
頭の中は疑問だらけで。
本当は悔しくて、辛くて、質問攻めにしたかったけど。
死ぬのなんて辛くないよ、みたいな声で返事をして。
あえて背筋を伸ばし、無理やり笑って診察室を出た。
幼馴染の彼に、なんて伝えるか。
心配性の彼が少しでも思い詰めてしまわないように。
恋も、楽しい事も。
これから沢山、出来ると思っていたのに。
自分の人生がもう残り少ない上に、
両親よりも先に死ぬなんて。
その後、薬局で大量に処方された薬を持って
帰路を歩きながら、ずっと。そんな事を考えていた。
ー...............................
家に着いてしまい。
大きく息を吸ってからお母さんに話しかける。
エプロン姿のまま振り返るお母さん。
その声を聞いただけで、言おうとしていた言葉が
喉の奥に吸い込まれて行く。
結果をすぐに口にしない私に違和感を覚えたのか。
お母さんは訝しげにそう言ったけど。
お母さんの優しい笑顔を歪ませたくない。
そう思って言えなかった。
見せかけの笑顔を取り繕い、嘘をついて。
お母さんの視線から逃れるように自室に入り、
大量の薬を鍵付きの引き出しに入れた。
この隠し事が長くは持たない事も分かっている。
_それでも。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。