第41話

第40話
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2020/05/06 15:00
最期の時は、必然の展開のように。やって来た。
結唯
『泣かないで』
もうペンを握るのも辛いはずの彼女は、
それでも俺を励ます為にメモ帳を見せて来る。
症状が進んで居るのは、一瞬で分かった。
蓮斗
(何で無理してまで書いてくれるんだよ)
最初は画数が多い漢字が平仮名になり。
段々と平仮名が増えて、文の長さも短くなって。
筆跡も震えていて。
蓮斗
(もう、強がらないで欲しい)
それでも、笑顔を絶やさなかった。
蓮斗
(何で...っ、自分より周り優先なんだよ...!)
見舞いに来る人達の時間が、暗くならないようにと。
蓮斗
(泣かないなんて、無理だ)
自らの瞳から零れ落ちた涙が、彼女の頬を濡らす。
結唯
『もう蓮斗は大丈夫だから』
平仮名にされなかった自分の名前を見て、
ますます鼻の奥がツンとする。
蓮斗
分かったから、書かなくて良いから.....
これ以上、見ていられない。
ペンを置かせようとするけれど、彼女は頷かなかった。
結唯
『やだ』
固い意思が、強い決意が読み取れて。
蓮斗
やだって...でも.....
何も、言えない。
結唯
『そんなことばにうなずく私は私じゃない』
結唯
『びょうきを言いわけにしないって決めたの』
ふんわりと笑う結唯が場違いな程、綺麗だったから。
蓮斗
.......分かったよ
とうとう俺が折れて、苦笑する。
蓮斗
分かった。結唯が決めたなら、尊重するよ
.........でも。
結唯
『ありがとう』
涙は止まってくれない。
蓮斗
.........ごめん、今...止めるから...
俯いて、必死に拭う俺。
結唯
.......................
黙って見ていた結唯が次に取った行動は、予想外の物で。
自分の命を、自分で縮める行為。
結唯
...............ケホッ
人工呼吸器を、外した。
お母さん
結唯!!何やってるの!
早く、、早く付けて...お願いだから.....
蓮斗
早くしないと呼吸が苦しく.....
付け直そうとする奏さんを、結唯は手で制す。
結唯
『止めないで』
苦しげな呼吸音が漏れ聞こえる。
結唯
『ちゃんと口で伝えたいことがあるの』
急にこんな事を言い出すのは、
何か訳があるのだと察したけれど。
結唯
『お母さんは出て。お父さんも入らせないで』
実の両親を病室に入れないなんて、
何を考えているのだろうか。
蓮斗
結唯.....さすがにそれは.......
結唯
『おやふこうなの、分かってる』
本来なら、俺が何かを言える立場では無い。
蓮斗
なら.......!!
どうしても、納得出来なかったけれど。
結唯
『分かってても、
蓮斗だけにきいてほしいことがあるから』
蓮斗
.............っ奏さん、どうしますか
最後の決断は、奏さんに委ねる事にした。

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