第42話

第41話
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2020/05/10 15:00
お母さん
.................お母さんには話せない?
寂し気に結唯を見つめる奏さんの瞳。
彼女も一瞬だけ、罪悪感ある表情に変わった物の。
結唯
『ごめんね』
発言を取り消す事は無くて。
お母さん
そっか.......
気まずい沈黙が、部屋に満ちる。
_____やがて。
お母さん
分かった。お父さんにも伝えておくね
奏さんが、眉尻を下げながら微笑んだ。
俺にだけ聞こえる声で、
『結唯をよろしくね』と付け足しながら。
蓮斗
.............え、それって
肝心な言葉は聞けていないが、
雰囲気だけで彼女にも伝わったらしく。
結唯
『いいの?』
2人きりの時間が、作られる事になって。
お母さん
うん。ねぇ、結唯
お母さん
ずっとずっと、自慢の娘だからね
結唯
.................っ
奏さんが病室を出て行った後、結唯が初めて泣いた。
直接聞けなかった事が、俺に尋ねられて。
結唯
『私、呆れられてないかな』
結唯
『あんなやさしくしてもらって、いいのかな』
その全てに、笑顔で頷く。
蓮斗
...........良いに決まってる
少し位のワガママは、皆が許すから。
結唯
『ほんと?』
蓮斗
...........大丈夫。
不安気な様子の彼女に、今度は俺が笑いかけると。
結唯
『ありがとう』
奇跡のような瞬間が訪れた。
結唯
.........ね、れんと.......
少し掠れて居る声。
蓮斗
.......!!結唯、声が.....
けれど、それは確かに結唯の声で。
蓮斗
(もう二度と、聞けないと思ってた)
小さい事が気にならない位に、嬉しかった。
蓮斗
...........結唯?
久々に声を出した事で、喉と体力を使い過ぎたのか。
結唯
ねむ、たいな.......
トロンとした瞳に、俺が映る。
蓮斗
.................(まだ.....)
今眠らせたらダメだと本能が教えてくれた。
今度こそ本当に、話せなくなると。
結唯
ん、あの、ね.......私がいなくなったら...っ
たどたどしい言葉に、耳を澄ませる。
結唯
てがみを.....よんで、ほしいの
1字1句、聞き逃してしまわないように。
蓮斗
.......手紙?
彼女が遺す全部を。
結唯
かくして、あるから。みつけて
結唯
..........ゴホッ...『ふたりにはかいてないから』
世界中の全ての人が忘れても、覚えている。
蓮斗
...........分かった
結唯
.......あり、がと.....
俺の返事に、安心したように笑った結唯は。
結唯
.....だいすき
絞り出すような声を最後に。
蓮斗
え.................?
縋るように掴んで居た手からも、力が抜けて。
結唯
.............................
まるで眠るように、息を引き取った。
蓮斗
何だよ、それ.....
蓮斗
お前だけ.....っ、ずるいだろ.....
溢れて来る感情や想いは、もう止まらない。
お父さん
...きっと結唯も、
蓮斗君に見守られて幸せだった
お母さん
結唯の傍に居てくれて、ありがとう.....
彼女の両親に背中をさすって貰いながら。
蓮斗
俺も...結唯の幼馴染になれて、良かったです
涙が枯れるまで、泣いた。

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