第28話

第27話 蓮斗side①
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2021/07/03 07:35
自室で勉強をしていた俺に電話が掛かって来たのは。
1人で彼女に会いに行った、その夜の事。
蓮斗
はい、俺ですけど...どうしたんですか?
酷く慌てた彼女の母親の口から語られた内容は。
お母さん
結唯、が.......!
結唯が、また、昏睡状態になっちゃって...!
蓮斗
ー...え?
あまりにも重くて。
蓮斗
(嫌な予感がする。あの時以上の)
それに、胸騒ぎがした。
お母さん
来れるかな...?
結唯も、きっと蓮斗君が居てくれた方が
頑張ってくれると思うから...
急いで最低限の荷物を持ちながら、通話を続ける。
蓮斗
もちろん、すぐに向かいます。
それまで、それまで、結唯を...お願いします
俺を、間に合わせて欲しいと、頼んだ。
お母さん
_任せて。
母親のプライドにかけて、絶対に。
死なせないから。
頼もしい声で請け負ってくれた結唯の母親と電話を切ると、
自転車のスピードを出来る限り上げて、病院を目指す。
蓮斗
死んだりしたら、恨むからな、結唯
早く、早く。全てが遅くなってしまう前に。
ただ、生きていて欲しい。
それだけを願いながら駐輪場に自転車を置いて、また走る。
蓮斗
__遅くなりっ、...ました...!
病室の扉を開けると、思ったよりは静かな雰囲気で。
これは処置の終わった後の雰囲気なのか。
それとも間に合わなかった時の特有な雰囲気なのか。
蓮斗
結唯は.....!大丈夫なんですか?
心電図を見るのも、もどかしくて。
そのベット脇に座る彼女の母親に問いかけると。
いつもの元気な雰囲気は消え失せ、
少しやつれたような表情を浮かべて、答えてくれた。
お母さん
...とりあえず.......山は乗り切ってくれたって。
でも、もう...本当に...
必死に作ってくれて居る微笑みが、崩れ。
お母さん
二度と、100%の確率で。
結唯が歩けるようになる事は、無いみたい。
お母さん
後は、薬すら効かなくなって.....
その時に訪れる死を待つだけって言われたの。
出来る事なら変わってあげたかったと
静かに涙を零していて。
お母さん
ねぇ、蓮斗君。
蓮斗
...はい
俺は、その様子を見ても、何も言う事が出来なくて。
お母さん
ごめんね。ごめんね...
蓮斗君にも、辛さを背負わせてしまって
謝るのは俺の方なのに、謝られてしまった。
蓮斗
そんな、そんな事...無いです
無責任に。結唯自身だけで無く。
結唯の家族の辛さや痛みも理解した顔をして。
一緒に背負えて居るみたいに思い込んで居たけれど。
俺は最初から。何一つ、背負えていない。
蓮斗
...あの。こんな時...言っていい事なのか
分からないんですけど。
だからこそ。今からでも間に合うのなら。
自己満足と言われても、構わない。
蓮斗
結唯を、支えさせて貰えませんか。

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