これは、約12年前。
私が自分の生涯に渡る誓いを。幼馴染に立てた日の、記憶。
大人ばかりが集まる会場に、息が詰まったのか。
きっちりとした黒いフォーマルを身につけた
蓮斗が外に飛び出し、空を見ていた。
__瞬きすらせず、強い眼差しで。
蓮斗が静かに話し出す。
そんな彼の言葉に釣られるようにして、空を見たけれど。
空は雲ひとつない快晴だ。
呟くような彼の問いかけに私はキッパリと言い切った。
突然の私の大声に、蓮斗は驚いた顔でこちらを見る。
蓮斗の僅かに険のある声。
私は自信に満ちた顔で、胸を反らせた。
全てを読み取るような彼の強い視線にドキドキしながら、
深呼吸して言葉を続ける。
黙って私の話を聞いていた呆れ顔の蓮斗が、そう言って。
私は唇を尖らせながら言い返した。
それでも信じない彼を納得させようと思ったけど。
容赦のない、突き放すような言葉が彼から聞こえた。
このまま放っておいたら、彼が遠くに行ってしまいそうで。
一緒に聞きたかったのに、なんて思いながら
そっぽを向くと。
少しだけ口角を上げて。小さく笑う彼が、そこにいた。
お母さんが亡くなってから
全くと言って良い程、笑わなくなってしまった蓮斗。
活発で、外で遊ぶのが大好きだったのに。
__だから、この日決めたんだ。
ずっと隣にいると。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。