第38話

第37話
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2021/07/03 07:53
結唯
(抜け出したの初めてじゃないし...
凄く心配させただろうし.....)
怒られると、覚悟したのに。
結唯
...ねえ、どうしたの?
蓮斗が私を怒る事は無く。
蓮斗
.........................
しかも、抱き締められる腕が力んでいるような気がした。
結唯
.........蓮斗?れんとー?
心なしか、震えているようにも感じて。
結唯
(大丈夫、大丈夫だよ)
重なった幼い頃の彼の姿を見なかった事にしながら。
思わず、同じ強さで抱き締め返すと。
蓮斗
.......お前は、居なくならないよな
あまりにも小さい、私の耳にギリギリ届く声。
結唯
___え?
心の奥を見透かしたかのような内容に、目を見開く。
蓮斗
俺を置いて.......居なくなったりしないよな
結唯
それは.........
約束は、してあげられないのに。
結唯
...............うん。
蓮斗と一緒に桜を見るんだから
反射的に頷いて、微笑んでしまう。
蓮斗
...そう言ってくれると思った
だって、たったそれだけで。
彼が安心したように笑うから。
結唯
私を誰だと思ってるのっ!笑
良い所を見せたくて、強がる。
蓮斗
え?脱走バカwww
結唯
え...............っ
もう少しだけ、あと少しだけ。
蓮斗
嘘だよw
お人好しバカな幼馴染、かな
結唯
それ褒めてるようでディスってるよね?
2人で過ごす時間を下さい。
蓮斗
.......何の事だか?
思い出を増やすには、足りないから。
病院に戻る為、車椅子を押してくれている蓮斗を振り返る。
結唯
.......いつも、ありがとね
誰よりも大切な、自慢の幼馴染。
蓮斗
何か変な物食った?
結唯が素直にお礼言うなんて...
一緒に大人になりたかった。
結唯
シンプルに酷い.....
何?私をいじめて楽しい?え?
蓮斗
あ、看護師さん超こっち見てる
一緒に成人式に出たかった。
結唯
けれど、もう彼も気づいてる。
看護師
結唯、ちゃん?
どこに行ってたのかな?
結唯
ご、、ごめんなさい.....
私に残された時間が、あと1ヶ月も無い事に。
看護師
今回は見逃してあげるけど、次はダメだよ?
はい、病室戻ろうね
結唯
はーい.......
蓮斗
自業自得だなw
結唯
うっさい!笑
暖かくなり始めた風が、私達の髪を揺らす。
時間は、止まってくれない。
結唯
(グズグズしてたらダメだよね)
近づくタイムリミット。
最期くらい、綺麗に居なくなりたいから。
結唯
(心の準備、始めようかな)
空を見上げ、真昼の月に手を翳した。

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