第20話

第19話
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2020/05/04 09:29
外に出ると。
冷たい風が長い間眠っていた身体の体力を、
容赦なく奪って行く。
それでも、止まれない。
結唯
(今なら、この時間なら...まだ、きっと)
絶対、間に合わせたいから。
結唯
(お母さん、混乱してるだろうな)
走りながら、今も病室に居るであろう母の事を考える。
結唯
(でも、私は)
か弱い女の子には、なりたくないから。
結唯
(ーだから、ごめんね。お母さん)
親不孝な娘で、ごめんなさい。
迷惑を沢山かけて、ごめんなさい。
何度も何度も転びかけながら、
蓮斗の受験する大学の会場を、必死に目指す。
結唯
はあっ、はあっ.....見つ、けた
ーどれぐらい、走っただろうか。
限界も見えて来て。
半ば諦めかけた私の視界に映った、幼馴染の姿。
蓮斗
(...緊張するな...
やっぱ、結唯に会っとくんだった)
遠目でも、分かる。 
ずっと一緒に居た幼馴染の事を見間違えるはずは無いから。
結唯
ーっ、蓮斗!
最後に残った、僅かな体力を振り絞って。彼の名前を呼ぶ。
結唯
(...お願い、聞こえて)
途端に、弾かれたように顔を上げた蓮斗。
私を見るや否や、駆け寄って来る。
蓮斗
ー!.......結唯!?
お前っ、お前...何でここに...
驚きに目を見開いて、私の身体を気遣う幼馴染。
結唯
(...良かった...届いてた...!)
ー蓮斗の激励に来たんだよ笑
見え見えでも強がって、ピースサインをして笑うけど。
蓮斗
激励って...!まさか走って!?
そんな病み上がりの身体でここまで...
やっぱり彼には、私の強がりなんてお見通しで。
結唯
ー大丈夫大丈夫!
私を誰だと思ってるの笑笑
それでもやっぱり隠していたくて、嘘をつく。
結唯
これくらい、余裕なんだから。
今さら病人扱いしないでよね笑
本当は、自分の身体を支えるのだけでやっとの癖に。
結唯
やだなー笑
そんな深刻な顔、しないでくれない?笑
楽天的に振舞って。
蓮斗
ー結唯.....無理するなよ
受験直前の幼馴染を、励まそうと思ってここまで来たのに。
結唯
.......早く、行って。間に合わなくなるよ笑
どうして蓮斗は、私の全てを見抜いてしまうのだろう。
蓮斗
いや、でも...顔色が.....
結唯
ー私は大丈夫だから!早く!
これは、言わば私の最後の意地だ。
蓮斗
ちょっ、おい...押すなって
無理矢理にでも彼を会場の入り口へと押し込んで。
結唯
ー蓮斗!!!
とびっきりの笑顔で見送る。
結唯
努力してたの、知ってるから!
私は、信じてるから!...だから!
結唯
ー頑張れ!!
私の譲らない姿勢にとうとう折れたのか。
蓮斗
...分かった。俺、頑張って来るよ
優しい笑顔で宣言して、会場へと吸い込まれて行く
幼馴染を数秒間見つめた私。
結唯
(ー良かっ、、た...)
『おい!女の子が倒れてるぞ!』
『誰か救急車を!...あとー』
結唯
(ちゃん、と。幼馴染として、
相応しい見送り...出来、た.....か、な)







ーその後の記憶は、ほぼ無い。

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