いつだったか、高田先輩が言った。
黙々と仕事を片付ける和泉先輩を見る瞳に、
悔しそうな色を滲ませながら。
あの時は何て返せば良いのか分からなくて。
適当に返してしまったけど。
今思えば、最初から和泉先輩は"そう"だった。
まだ、僕が大学1年生で。
和泉先輩が大学2年生だった頃。
.................................。
既に教科書を持った同じ学部に通って居た友人に呼ばれ。
笑顔で返事をした時に耳に入って来た会話。
『和泉くん、また告白断ったらしいよ』
つい、耳を澄ませてしまう。
『え、また?さすが難攻不落の王子...笑』
それ位、和泉蓮斗と言う存在は大学内で有名で。
『こないだ4年の__先輩も振られたみたい』
同時に、色んな人から人気だった。
『もう和泉先輩も卒業かー...』
『結局、振られるの怖くて告れなかった...』
結局、先輩が卒業するまで
誰ひとり良い返事を貰えた人が出ないまま。
『王子』は卒業して行ったけれど。
まさか、こんな所で再会する事になるとは思って居なくて。
柄にも無く、動揺してしまい。
この時以上に驚く事なんて無いと思って居たけれど。
今が、『この時以上』の時のようだ。
あの和泉先輩に、好きな人の話が聞けるんだから。
ポーカーフェイスは、そのまま。
少し震えた声が耳に届いて。
『俺の救世主が現れてくれた』と先輩は笑う。
『側で、この無鉄砲な幼馴染を守れると思えたから』と。
でも。後に続く言葉に、僕は声が出なかった。
だって…それは、すなわち。
他の捉え方が与えられない、から。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。