第51話

エピローグ Noside
1,152
2021/07/03 08:03
都心を出て、1時間。
蓮斗
....久しぶり。しばらく来てなくて、ごめんな
住宅が並ぶその先に、青年の大切な人が眠る霊園がある。
丁寧にアイロン掛けされたシャツに、強い光が反射して。
蓮斗
最近...お前の事、話したんだ。友達と、後輩に
仕事中には見せない表情で、彼はお墓の前にしゃがみ込む。
蓮斗
ちゃんと、ふざけないで聞いてくれたよ。
今まで何を心配してたんだろって思ったw
穏やかに、ゆっくりと言葉を紡ぐ声に、もう迷いは無い。
おもむろに花瓶を手に取ると、
まずはカスミソウを生けて微笑んだ。
蓮斗
地味だけど...好きだったよな、この花
ブーケや花束の名脇役と言われる花だが、
その花言葉はとても綺麗で。
『清らかな心』『幸福』『無垢な愛』。
全て、幼馴染に青年が与えられた物だった。
蓮斗
...お前は俺に、私の事忘れてって言ったけど。
.....彼女が居なくなった世界で。
蓮斗
俺は、忘れる気無いから。
絶対、、忘れてやらない
彼は、これからも全てを抱えて生きて行くのだろう。
その胸の中にある思い出を捨てて、
歩き出す事なんて出来ないから。
蓮斗
あと。俺も結唯に伝え忘れてた事あるよ
返事が返って来ないと、分かって居ても。
蓮斗
俺.....お前の事、好きじゃ無かった
語りかけるような声音は、変わらないけれど。
過ぎ去った時間が戻せるのなら。
蓮斗
愛してた...誰よりも愛してた、だから...っ
今は宛先の無くなってしまった言葉を、届けると。
彼は、涙ながらに呟く。
失ってから、手に入れたのは。分かったのは。
『当たり前に明日、同じ人に会える訳じゃ無いんだよ』
『もしかしたら、言えた事も言えなくなるかも知れない』
『だからね、私は...』
____後悔、したくないの。
蓮斗
(何で今更、色々気付くんだよ...)
自分を大切にしてくれる誰かを尊ぶ気持ち。
どんなに嬉しい事も、彼女と分かち合うからこそだった事。
いつの間にか青年の手には、
開かれた青いベルベットの箱が握られて居て。
プラチナのリングの縁が、キラリと輝く。
蓮斗
(酷、だよな)
恋愛的な意味で渡される指輪には、
途切れぬ愛と言う意味が込められているのに。
渡したかった人は、もう世界の何処にも居ない。
蓮斗
また会えるように。予約させてくれますか?
コト、と静かな音を立てて指輪が置かれ。
カスミソウとスターチスを生けた花瓶が横に並んだ。
蓮斗
.....意地でも、出会うよ
ピンク、黄色、紫...
3色のスターチスが風に吹かれ、優しい香りを青年に運ぶ。
蓮斗
(今度は、ちゃんと...)
『永久不変』。
蓮斗
(自分にも他人にも素直になろう)
『誠実』。
蓮斗
(次はもう少し女子らしくても...w)
『しとやか』。
表し切れない想いが込もった花に、幼馴染は何を思うのか。
蓮斗
...未練がましいって怒るか。
向こうに行ったらw
彼の左手の薬指にはペアリングの片割れが嵌められて居る。
蓮斗
(...いや、それでも良いよ)
後ろを振り返らずに前に進み始めた青年の瞳には。
蓮斗
...次に会う時は、、
悲しみを乗り越えた人特有の輝きが。
蓮斗
__________来世で。
強く、強く宿って居た。
                                                                           _______Fin,

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