今だ看護師さんとコソコソ話している
蓮斗を、放って置く事にして。
取られてしまう前に、
普段なら残して置く好きな物から口に運んだ。
そっと苦笑いをして。
また1口、お肉を食べようとしたその時。
ようやく蓮斗が振り向き、悲壮な顔をする。
看護師さんの前で、懇願するのはズルいと思う。
はぁ、とため息をついて。
残りのハンバーグを口の中に押し込む。
美味しそうに頬張る蓮斗の喋り方は、いつも通りで。
器用な人は本当に羨ましい。
ヤケになって、唐揚げは一口もあげなかった。
おぼんを下げて貰って、2人きりになった病室で。
むぅ、と頬を膨らませる彼。
それだけ見ていれば、本当に可愛いのだけど。
ちょっと子供っぽい所があるから、まだまだ心配だ。
至って普通の質問にも。
人を煽る事を忘れない。
素直になってくれれば、
根はもの凄く優しいのに、もったいないと常日頃思う。
__そして。あっという間に3時50分を指した時計。
寂しいとは、言わない。絶対にバカにされるから。
もう、ただの幼馴染のままで居るって決めたのに。
全部の感情を見なかった事にして。
ベットから車椅子に移るのを、蓮斗がサポートしてくれて。
頬の熱さを感じたまま、別れ。
リハビリテーション科に、向かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!