楽しかったデートも、もうすぐおしまい。
空が茜色に変わっている事に気づいた私は、
最後くらい、デートっぽい物に乗りたいと考えた。
ジェットコースターやその他諸々の乗り過ぎで
疲れが抜けていないはずの蓮斗。
それなのに、快く頷いてくれた。
それが嬉しくて、また走り出そうとした私。
今度はさすがに止められた。
私が子供っぽいせいで恥ずかしい思いをさせたかもと
夕方になって気づく。
やってしまった...なんて、落ち込んでいると。
優しい声と共に、差し出された蓮斗の手の平。
恐る恐る、自分の手を重ねて。
繋いだ手から伝わる彼の温もりに、思わず顔が緩む。
精一杯の褒め言葉は、蓮斗に伝わらなかったようで。
真顔で彼を見つめると、観念したように吹き出した。
元気に外を歩ける内に、喋れる内に。
いい所を沢山見つけて、褒めておきたいのに。
その声は、まるで全く理解していないように感じた。
後になって、何と言われてもいい。
嘘だろ、って笑われてもいい。
ーただ。
彼に知っていて欲しい。
私がどれだけ、幼馴染として大切に思っているか。
少しだけ、声が震える。
困らせたのは、表情を見れば分かった。
それでもしっかり私の思いを汲み取ってくれて。
どんな状況の後でも、
私の気持ちを楽しいものへと変えてくれる。
繋いだ手の熱を噛み締めるように
目を伏せながら。1人、微笑む。
_いつか来る終わりの日まで。
お互いの為に、彼の未来の為に。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。