前の話
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ヒョンはいつも歌っている。HIPHOPチームに所属しながらも、バラードからテンションの高い曲まで綺麗に歌い上げる。ラップをしてる時、ステージに居る時、歌詞を考えている時…。どんな時でもキリッとしてるが、スイッチが切れると別人のように気の抜けた顔をする。
僕らは多忙なアイドルだ。24時間キラキラしたSEVENTEENでいれる訳じゃない。たまには現実から離れて、穏やかな時間を過ごしたいとも思う。そんな時ウォヌヒョンは歌を歌い、僕はそれを聞く。音楽をして生きていくと決めた手前、自分がその旋律の中にいたいと考えるのが普通だろう。けど僕は違う。人の作る音楽を、美しい歌声を聞いていたいと常に思うのだ。
今日も彼は歌う。ステージ上とはまた違う、優しい表情で、目を閉じながら、綺麗なメロディのを歌う。
『勝手に流れる涙で霞むあなたの笑顔』
『あなたの優しさに気づくのはいつも全て終わってから』
『わたしを覚えていて』
…失恋の歌。ヒョンが得意なジャンル。神様は皮肉なものでそんな歌にぴったり合う声を彼に与えた。決して自由とはいえないアイドルの世界でいろんな苦労をしてきた彼だから表せる感情もあるのだろうが。
彼の周りにはお金目当て、イケメン目当て、アイドル目当ての女が沢山寄ってきた。純粋な心に入り込んで、ズタズタに切り裂いた、あの女達の顔はずっと忘れない。傷つききったヒョンの顔もきっと忘れられない。
「僕、ヒョンの声好きです。甘くて、何もかも包んでくれるような感じで。」
照れたように笑う。ありがとう…ポソッと一言。こんな時愛しくて仕方がなくなる。照れ隠しじゃなく素直に喜ぶ、そんな姿を見る度。
この人の身に起きること全てから守りたい。そばで守らせて、ウォヌヒョン?弟でいいから、あなたの盾にならせて。傍でその声を聞かせて
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。