学校に着くやいなや、待ちわびた様子の椎名さんが
璃夢に駆け寄って来る。
体調まで心配してくれる親友に、璃夢は心配させまいと微笑むけど。
俺からすれば、丸わかりで。
内心は立っているのも辛かったのかもしれない。
足早に席に座った璃夢から力が抜けたのが分かった。
璃夢に聞こえない距離である事を確認して。
同じく心配そうに璃夢を見つめる彼女に声をかける。
今忙しいんだけど、と言いたげな瞳をこちらに向ける
椎名さんに、Twitter荒らしについて話した。
思い当たる人物がいる、と伝えた途端。
椎名さんの瞳が一瞬輝いて、俺も微笑む。
犯人は、きっと。
いつも璃夢の投稿や生放送に否定的、批判的な
コメントを毎回していた人物。
この条件なら、そうそう当てはまる人は居ない。
ゾッとするような迫力で呟く椎名さんと
必ず犯人を見つけよう、と誓い合った。
椎名さんと交わし慣れた会話をしてから、
俺はぼうっとした顔で座っている璃夢の頬を摘む。
きっと1番不安なのは璃夢だから。俺がやるべき
なのは、その不安を少しでも軽くする事。
大好きだから。
どんな時でも、1番近くに居たい。
けれど、そう思っていたのは。この段階で既に。
俺だけだったのかもしれない。
些細な違い過ぎて気づけなかったけれど。
彼女は、『私も好きだよ』とは。
言わなかったのだから。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。