私の部屋にて。藍花はクローゼットと向き合っている。
服を取り出し、合わせては首を振る作業を繰り返す様子を。
私はクッションを抱えて眺めていた。
ようやく1つ目の候補が出来上がったらしく、
自信ありげに藍花が私を呼ぶ。
隣の部屋に移動し、着替えて。
くるり、と姿見の前で一周する。
そして藍花が待つ自室へと戻り、見せると。
我ながらいい出来だ、と藍花が呟く。
内側はシンプルに、
外側はフワフワとした生地の上着を合わせ。
少しカジュアルに纏められたコーデ。
そして、提案された小物やアクセサリーにも
何一つ文句のつけようが無くて。
藍花を頼って良かったと、心から思った。
その後、取り出した物をしまうのも手伝って貰い。
手作りのマカロンと紅茶を出して、少し話して。
分かれ道まで送る道すがら。
さっきから聞こうと思っていた事を聞いてみる。
少し言い淀んだ藍花。何だか嫌な予感がした。
言わないで置く?と首を傾げた藍花に。
曖昧な言い方しないで、と頼むけど。
いっそ開き直るその様子に、もう怒りすら沸いてこない。
わざわざ覚悟を決めて、聞いたのに。
藍花が口にしたのは思ったよりもまともな言葉で。
失礼だけど拍子抜けしてしまう。
可笑しそうに笑う藍花に真顔で返した心からの言葉。
それが親友に届いたかは、
この言葉からは分からなかったけれど。
伝わっていてくれれば良いな、と願った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。