第40話

第39話
2,170
2020/01/31 13:41
自分の気持ちにも必死に嘘をついて。
『別れようか』と口にした私を、
りっくんがいつもの輝きを失った瞳で見ながら呟く。
莉玖
莉玖
...別れよう、とか。嫌い、とか。
軽々しく口にしないで欲しかったな
恋は終わった。心は色を無くした。
だから言葉だけはスラスラと出て行って。
璃夢
璃夢
ーごめん、でも。本心だから。
綺麗に振って貰う為に、
諦めがつかない終わり方をしないように。
私は自分から望んで、彼に嫌われる。
璃夢
璃夢
(二度と関わらない、って決めた
だろうな。今)
莉玖
莉玖
ー...分かっ、た。それが璃夢の答え
なら...俺はそれを受け入れるよ
璃夢
璃夢
...分かってくれて安心した。
ーじゃあ、私はこれで。
良かった。これで良かったんだ、と言い聞かせて。
璃夢
璃夢
今までありがとう。本当に楽しかった。
...これは、嘘じゃない。今更でごめんね
卒業までもう話す事はきっと無いと悟った。
ならば彼の記憶の中の私は、笑顔で締めくくりたい。
この場に不釣り合いな程の笑顔を浮かべ。
璃夢
璃夢
ーさよなら。最後まで良い彼女で
居られなかった私を、許してね
彼に背を向け歩き出す。
莉玖
莉玖
..............................
璃夢
璃夢
(どうか追いかけて来たりしないで。
今追いかけられたら...せっかくの決意が
全部崩れるから)
私が今、無様な姿を晒しても。見ている人は居ない。
璃夢
璃夢
(今日だけは...泣いても良いよね)
明日からは人から見て、どんなに痛々しくても
笑うから。
璃夢
璃夢
(...心が、苦しい)
足に力が入らなくて、引きずるように歩いた。
璃夢
璃夢
(どうか次の恋をする時は。
幸せになってね、りっくん)
貴方の隣に居ることを望む権利は、
もう私に無いから。
せめて、彼のこれからが。沢山の笑顔で溢れる事を
願うくらいは、許して欲しい。
璃夢
璃夢
(これで、本当に最後。)
漏れる嗚咽を押し殺しながら、涙を拭う事もせず
足を進め、自宅を目指した。
ー同じ頃。教室の中で立ち尽くす
りっくんのスマホが揺れる。
莉玖
莉玖
.......なんだろ
力のこもっていない手がスマホを掴み、
生気の感じられない目が画面を写した。
莉玖
莉玖
.......え...椎名、さん?
まさかの人物からの着信に驚く彼の視線の先には、
『椎名さん』との表示。
莉玖
莉玖
タイミングが良いのか、悪いのか...
今喋りにくいな...別れたなんて
勘の良い彼女の事だから声を聞いただけで
分かってしまうかも知れないと電話に出るか迷う彼。
莉玖
莉玖
でも...何か大事な用かもしれないし。
出るか...バレたらその時だ
しばらく悩んだ末に応答ボタンをタップし、
耳に当てた瞬間。
藍花
藍花
赤峰くん!?出るの遅い!
璃夢のTwitterを炎上させた犯人の
アカウント、特定出来たの!
興奮と焦りが入り混じった藍花の珍しい大声が。
莉玖
莉玖
...嘘。マジ?本当に?
消えていた希望に光を灯して。
藍花
藍花
本当。これで璃夢を助けられるよ
莉玖
莉玖
ーうん.....!
狂いに狂った私達の未来を、本来の姿に戻し始める。

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