いつも通りの時間に起床。スマホを見てから
準備を始めようとした私の目に飛び込んで来た、
ものすごい数のTwitterからの通知。
何か起きた。そう察して、震える手でTwitterを開く。
『コラボ放送始めたの莉犬くん狙ってたからなんだ』
『ありえない。見損なった』
『結局の所むぅも恋愛したかっだけなんだね』
そのどれもコメントが、最後はこう終わっていた。
突きつけられたリスナーの皆からの怒り。
いつかはこうなる気がしていた。
この恋を、この幸せを。抱きしめていたかった。
ーその時。
スマホへの着信。
きっと彼も炎上した私のTwitterを見たのだろう。
誰かと話したい気分では無いけれど。
声が震えないように、力を込めて。
耳にスマホを当てる。
彼の名前を呼び切る前に、焦りの混じった彼の声が、
私の名前を呼んだ。
そんなに焦らないでと笑ってみせたけど。
彼をそんな簡単に騙そうなんて甘くて。
プツッ。ツー。ツー。ツー...
制止しようと声を上げたけど、その時にはもう電話は
切れていた。
着替えるだけ着替えようと慌ただしく動き出す。
ー10分後。
ピンポーン。
急いで玄関に向かい、扉を開ける。
息を切らして。肩を上下させて。
膝に手をついたままこちらを見る彼がいた。
それを見て。申し訳なさと、会いたくないなんて
一瞬でも思ってしまった自分への怒りが溢れ出す。
彼が言いにくそうに本題に入った。
これ以上気を遣わせたくなかったのに。
1人で全部やりきろうとして隠したのに。
結局やりきれなくなって。
情けなくて、俯く。
今だけは弱々しい私にはならないと決めて、
歩き始めた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!