数時間後。死んだ魚のような目で編集を続けていた
俺の目を、一瞬で輝かせる出来事が起こった。
画面には、丁寧な言葉でDMへのお礼と、
コラボについての返答が書かれている。
正直言って、それも期待していた。
もしかしたら素顔を見る事が出来るのではないかと。
だが、一筋縄では行かないらしい。
コラボしたいならこれくらいは我慢しなくては
いけない。そう決めて、DMを送る。
今回はすぐに既読がついた。
あの『むぅ』と自分が普通に会話している。
それだけで感動した。
飛び跳ねたいのを我慢して、話し合いを続ける。
流石は、と言ったところか。
誰よりもリスナーの事を考えている。
最後まで腰が低く、話しやすかった。
ますますコラボが楽しみになる。
その後むぅさんは予定通り、
夜の生放送でコラボの件について発表し、
沢山のコメントを貰っていて。
当然、リスナーの反響は大きく。
顔出しするのではないかと囁かれ、
ネット中の歌い手に関するスレッドが、
この件について触れた。
明るいその声が聞こえなくなったあとも、
コメント欄では沢山のリスナーが思い思いに
何を歌ってもらうか話し合っている。
そんな事を口にした自分に苦笑しながら、
どんな風に発表しようかと考えを巡らせる。
しばらく考えては見たものの、
ありきたりなものしか浮かんで来ない。
何かヒントが貰えるかもと、期待しながら眠りについた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。