もう後戻りは出来ない。
『本当の事?』
『...もしかして炎上の件?』
自分の責任は自分で取らなければ、いけないから。
見えていないとしても、深く深く頭を下げる。
『今更?』
『もう遅いよ』
冷たい声にも耳を傾けて。
好きになってしまった人がいるから。
恋に落ちてしまったから。
『はあ!?調子乗るなよ』
『ふざけんな!』
また荒れ出すコメント欄にも、取り乱さずに。
ちらり、と横で手を繋いでくれる彼を見つめる。
そのまま微笑んで、続ける。
この大好きが、
私達を応援してくれる人に、多くの人に届くように。
より一層繋ぐ、手に優しく力を込めた。
私の夢を壊しかけ、潰しかけた根源の話。
それを、とうとう公表する。
"彼女"も、きっと。
この生放送を見ているんだろうから。
『.............................』
もう、冷たいコメントをする人は、誰もいない。
穏やかな空気が、満ちていた。
変声機を通していても、自分の声に感情がこもる。
何気なく過ごしていた歌い手としての日々。
その尊さを、今回の件を通して再確認したから。
これからは、守られるだけでなく。
誰かを守りながら、生きて行く。
これが、きっと。私が輝く為の『条件』。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!