昼休み。机を挟んで向かい側に座る藍花に、
朝の事を伝えると。
自嘲気味に笑いながら、更に続ける。
私が何を言おうとしたのか察したのだろうか。
途中で遮った藍花の声は少しだけ怒りが滲んでいて。
いつだって、迷ってばかりの私に答えを
教えてくれる。
私が考え過ぎないように、さり気なくフォローを
入れて。
真剣に話を聞いて、意見してくれて。
マイナスの感情を減らしてくれる。
私の言葉に表情が少し緩み...
またすぐ引き締まって。
頼もし過ぎる微笑みが私を元気にしてくれる。
藍花の場合本当に容赦しないので少し不安だけど、
これくらいの意気でいてくれた方が、心強い。
ーそして。緊張の放課後はすぐにやって来た。
何と言うべきなのだろう。
気持ちばかりが焦って上手くまとまらない。
結局言えたのは、一言だけ。
その言葉に頷いた彼は歩き始めかけて...
思いついたように振り返る。
そのまま一瞬だけ優しく抱き締められて。
そっと離され、囁かれた。
慌てて謝ると、彼は大丈夫。と笑った。
笑顔で見送ったものの、やっぱり不安で。
どうか、私を選んでくれますようにと、願う。
彼のいない、憂鬱な時間が始まって。
今まで黙ってくれていた藍花が口を開いた。
その言葉に緩みきった心が壊れる。
優しい藍花の声と相槌が、私の隠していた本音を
引き出して行く。
ズキズキと痛む心を抑え込んで。
大好きな人の帰りを待った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。