第30話

第29話
2,344
2020/01/22 12:18
璃夢
璃夢
(うぅ...りっくん、皆、頑張れ...!)
いよいよ試合も終盤。
前半こそ皆元気に動き回っていたが、
その表情には疲れが見え始めていて。
璃夢
璃夢
(あと、1点...)
1点リードされたまま、残り時間は10分になった。
璃夢
璃夢
(...本当に負けちゃう...)
辺りを見渡しても、周りの女の子や観客は
諦めてしまっているように見える。
璃夢
璃夢
(この空気を変えられるのは、
私しかいないんだ)
本当は、大きな声をこんなに人が大勢いる所で
出すなんて論外だけど。
璃夢
璃夢
(今日だけ。今日だけ...頑張ろう)
ぐっ、と足に力を入れて。
すぅ、と思い切り息を吸って、口元に手を当てて、
叫んだ。
璃夢
璃夢
りっくんー!頑張れー!
 ザワっ。
いきなり立ち上がって叫んだ謎の女子高生に
皆が目を向けるけど、今だけは気にしない。
璃夢
璃夢
(超目立ってる...最悪...)
ーただし。足は、震えていて。
莉玖
莉玖
...............!
ほんの少し後悔しかけた、その時。
璃夢
璃夢
(あ...)
本当に一瞬だけ、瞬きすら出来ないような時間。
彼と、目が合ったような気がした。
璃夢
璃夢
(.......届、いた?)
まとうその雰囲気が、変わって。
そんな司令塔の様子に、皆がやる気を取り戻す。
璃夢
璃夢
(残りは3分。でも、りっくんなら...)
祈るような思いで、その姿を焼き付ける。
そしてー...
ピピーッ!
試合終了のホイッスル。
その直前に放たれたボールは。
璃夢
璃夢
(.........や)
相手ゴールの中に、しっかりと収まっていた。
璃夢
璃夢
(.........やったあああ!)
さすがにこれ以上は目立てないので、
心の中で飛び跳ねる。
女の子達がタオルを持ってメンバーの元へ駆け寄って行く。
もちろん彼もその1人で。
莉玖
莉玖
ーありがとうw
囲まれて笑うりっくんは凄く格好良かったけれど。
璃夢
璃夢
(...私の、いらなかったかな笑)
お弁当を手にしている女の子の姿を見つけてしまい。
ちくり、と胸が痛む。
璃夢
璃夢
(あの子、物凄く可愛いし。
お弁当もきっと私のより上手だよね)
泣きそうになるのを、必死で堪えて。
璃夢
璃夢
(帰っちゃおうかな。忙しそうだし)
立ち上がりかけたその時、目の前に影が出来た。
莉玖
莉玖
ーどこに、行こうとしてるの?
それは、今1番会っておめでとうと伝えたくて。
でも会いたくなかった人。
璃夢
璃夢
...りっくん...!?
莉玖
莉玖
何で、来てくれないの
不満そうに私の手首を掴んだまま呟く彼。
璃夢
璃夢
え.......いや...
私は開いた口が塞がらない。
璃夢
璃夢
(な、何で?さっきまでグラウンドに
いたよね?いつ移動したの?)
莉玖
莉玖
璃夢が来てくれないから。おかしいと
思って来てみたら...
莉玖
莉玖
帰ろうとしてたの、どうして?
じと、っとした目で見つめられ、逃げ場も無くて。
璃夢
璃夢
(バレてたー)えと、その...
これは大変な事になったぞ、と引きつった笑顔で
誤魔化そうと試みるけど。
莉玖
莉玖
言い訳無用だからね
それすらも予測されて、先手を打たれ。
璃夢
璃夢
は、はい...
完全に、退路を失った。

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