俯きながら、歩いて居ると。
自然と行った事のある場所に向かう物で。
高校時代の大親友の家の前に着いて居た。
いきなり訪ねたら、迷惑だろうか。
彼女も高校生だった頃とは違い、仕事が忙しいらしく。
『じゃあ、またね!』
『うん、今度遊ぼね!』
最後のLINE履歴も、1ヶ月前で止まって居る。
ただ、誰かに側に居て欲しくて。話を聞いて欲しくて。
縋るような気持ちで、彼女の部屋のインターホンを押した。
間も無く扉が開き。
即座に驚きの表情を浮かべる親友。
苦笑いを浮かべつつ、手短に今までの事を話すと。
納得行かない、と言いたげにその眉間に皺が寄ったけど。
深夜のアポ無しと言うマナー違反をしても。
ニコッと柔らかい笑顔を浮かべて扉を大きく開いてくれる。
昔から不器用だった藍花の優しさが、嬉しかった。
背中に手を当てられるまま、中に足を踏み入れて。
彼女の後ろに付いてリビングへ。
どう見ても仕事中なパソコン、大量の書類、ホチキスなど。
色々な事が垣間見える物が散乱する中で。
私は、藍花のくれたココアを片手に話し始める。
彼女も、眠気予防なのか。 ホットコーヒーを持って居た。
私の長々とまとまって居ない話を。
嫌な顔ひとつせず最後まで聞いてくれた彼女は。
私がいつでも此処に居るから、と笑ってくれる。
単純に、まず疑われてしまった事がショックだった。
勝手に信じてくれると思って。
ずっとファンを大事にする事に欠けて居た。
ミステリアスで冷たい私は、もう居ないから。
これからも2人で、リスナーと同じ目線に立ちたいと。
そう、願ってしまうのだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!