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第1話

幸せを乗せた車は走る
「でね、また翔太くんは何でも初付けたがるなめんどくさい。とか言うんですよ。初デートで嬉しかっただけなのに。運転手さんはどう思いますか?」

また私は溜まりに溜まった不快感を吐く。この車内で吐くのももうルーティーン化している。そんな私の気味悪い愚痴を受け止めてくれるのはタクシーの運転手の「向井」と言った男だった。

私は毎日仕事終わりにタクシーを使用する。ある日いつもの運転手が仕事を辞めてしまい代わりにこの男がやってきた。最初は緊張して何も喋らなかったが「お客さん、僕で良かったら話聞くんでそんな顔するの辞めてくださいよ。」と言われ彼氏である渡辺翔太の悪口を好き放題吐いている。

彼氏である渡辺翔太とは付き合って半年になるが、甘々なリア充ライフを望む私には合っていなかった。デートなどの"恋人らしい"ものを嫌いキスは愚か、ハグでさえも最近は許せなくなってしまった。特に嫉妬されるのが嫌いで、1回それを言ってしまうと「気持ち悪い」と言われたきり1ヵ月は口を聞かなかった。友人には「別れたら?」と言われるがきっと心の底では好きだから、翔太くんもきっと私のこと…。それを信じて未だに別れていない。

タクシーを使用するのもこの男のせいだ。最初1ヵ月はとてもいい調子でいつも車で迎えに来てくれたが、1ヵ月を過ぎてからは「自分で帰れ」と突き放された。そうして毎日夜の街に明け暮れている。そんな反対の暮らしをしていながらも交際を続けていた。

「うーん、僕は「初」って好きですけどねぇー。例えば「初デート」とか。なんかドキドキしません?○○ちゃんの初めてを僕が貰っちゃったんやー、って。」

「ですよね…、でも私って重いんですかね?翔太くんにも言われちゃったし…」

運転手さんはいつも私が求めている回答をしてくれる。所詮「共感」というものだった。運転手さんだけがここ最近の癒しであった。いや、癒しとは違うのかも知れないけど。

「いや、重くないですよ、全然!寧ろ僕はこれぐらい重い方が好きです(笑)彼氏さんがすごい独特な方なんじゃないんですかねぇ…」

「ありがとうございます、やっぱり合わないんですかね、別れた方がいいのかも…」

運転手さんの優しい言葉に絆されついこの様な言葉が口から溢れ出てしまう。しまった。こんなこと言う予定ではなかった。これでは運転手さんも困るだろう、急いで取消の言葉を言おうとするがある言葉に口が開かなくなる。


「そんなに別れたいんやったら、お客さん。俺にしちゃいません?絶対幸せにしますよ。」


窓から突き抜ける風が私の心を揺らした。