第10話

【最終話】勘弁してよご先祖様!
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2021/08/31 14:49
 ガサガサと物音が聞こえ、目を覚ます。
 音は洗面所のほうから聞こえてくるようだ。
 アウストゥード様は、もう天上に戻ったはずだけど……。
 そんなことを考えていると、また微かに物音が聞こえた。
 まさか、また戻ってきたわけじゃ……。いや、そんなことあるかな……?
 でも、アウストゥード様あのマイペース男ならやりかねん……。
 昨日の別れに感傷的になる暇もなく、慌てて洗面所の様子を見に行く。勢い良くドアを開いた先には……。
「あっ、起きたー? おっはよー!」
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 そこには、短い白髪はくはつの男が……。
「へーぇ! これが僕チャンの雲孫の昆孫こんそんかー!」
「ウンソンの……コンソン?」
 このやり取り……。ものすごく心当たりがある。まさか……。ニコニコ笑う白髪の男をじっと見つめていると、その男は口を開く。
「やっほー! 子孫チャン、元気してる? 僕チャンはねー、天上からやって来たキミの先祖、ウェルーメン・オプターナだよー!」
 おちゃらけた口調でそう言って、横ピースを決める。パチっとウインクをした目の横に星が輝いて見えたのは、錯覚だろうか……。
「で、出た……。ウェルーメン様……」
 アウストゥード・オプターナの長男であり、魔法分析学の父、ウェルーメン・オプターナ……。またもや、ビッグネームの降臨だ。軽く目眩がする。
 アウストゥード様と同じ……いや、それ以上にクセの強い話し方……。教科書の肖像画の厳格なイメージはどこへやら……。
「あのー。どうしてまた、ご先祖様が……?」
「よくぞ聞いてくれましたー! 実はねー、パパ上が地上から戻ってきたんだけどー、僕チャン達先祖一同のもとに来るなり、楽しそうに地上での体験を話してたんだよねー!」
 ウェルーメン様は目を輝かせ、満面の笑みで言う。
 アウストゥード様の土産話……。何となく想像ができてしまう。
「そこで、それを聞いた僕チャン達は『子孫に会いに行きたーい!』って大騒ぎしたんだよー。だけどねー、地上に降りられるのは一人だけって言われちゃってさー。だからねー、『誰が地上に降りる?』ってちょっとケンカになっちゃったのー……」
「は、はぁ……」
 揉める理由が天上らしすぎる……。平和なのか否か……。いや、天上はきっと平和に違いない。
「そんなゴタゴタの中で、パパ上から僕チャンが一番適任だって指名されてね……。それで、何とか丸くおさまったってワケ」
「え、えぇ……?」
 ウェルーメン様こんなチャラそうな男が適任って……。私は一体、アウストゥード様にどう思われていたんだろう……。
「ってなワケで、これからしばらくの間よろしくねーっ!」
 そう言ってまた横ピースを決める。やれやれ。今回もクセが強いもんで……。

 そんな訳で、私とご先祖様との不思議な生活が再び始まってしまったのである……。




「もう! 勘弁してよ、ご先祖様!」




「勘弁してよご先祖様!」完

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