第49話

# 「所詮夢」チシャ夢
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2025/11/14 18:48 更新




#「所詮夢」チシャ夢


チシャの名前回読み返してまた好きになりました。

まぁチシャとちょっと仲が良かった
仕事の関係者くらいなイメージです。
深くは考えてないです


・ 夢主の片思い




  最近、夢を見ることが増えたように思います。

  布団に潜り込むと疲れからすぐに瞼が重くなり、
夢など見ないほど熟睡してしまうのが
以前の私の日常ではありました。

しかし近ごろは、どれほど働いても、
どれほど寝ずに過ごしていようとも、
必ず三日に一度は夢を見てしまうのです。



チシャ・ゴールド
今日はまぁ随分と、
仕事に熱心だったようですなぁ。




貴方の夢です。

貴方が私に話しかけてくる、
都合のいい夢を見るのです。


あなた
……。


明晰夢、と呼ばれる類のものでしょうか。
私はその夢を見る度に、
これが現実ではないと気づきながらも
貴方と会話を交わしてしました。

だって、貴方が呼吸をしているのです。
白く染まった髪の毛を揺らして、
その愛しい声が私の鼓膜を揺らすのです。


有り得ない。そう分かっていても、
これが夢だと気づいていようとも、
私は貴方を無視することなど
できそうにもありませんでした。

理由など、これ以上語るのは無粋でしょう。

  
あなた
……今日は、忙しかったんです。
寝る時間が惜しいほど、
つい没頭してしまいました。
チシャ・ゴールド
感心はしませんが、貴女らしい。
変わっていないようで、
当方は安心した次第。


「ふ」と微笑に近い表情を、
夢の中で貴方はよく浮かべていました。
その表情は、私が一番愛しく思っていたものです。

私が作った、私に都合のいい夢。
貴方が私の言って欲しい言葉を紡ぎ、
私のして欲しい表情をするのは当然のことでした。
しかしそれでも、私は貴方が実際に生きているようで
それを夢だと信じたくない気持ちもありました。

あなた
チシャさんは、最近どうですか。
チシャ・ゴールド
特別貴方にお話するような
面白い話はないですが…ふむ、
チシャ・ゴールド
先日のセシルスの話でもしましょうか。
あなた
チシャさんが話すセシルスさんの話、
情報量多くてついていけないんだよなぁ…



いつも、たわいのないことを話しました。

ほとんど貴方は私の話を聞くばかりでしたが、
目を細めながら私を見て、
私のどうでもいい話に耳を傾けてくれる様子は
幸福以外の何物でもありませんでした。

なぜ、こんな夢を見てしまうのだろう。


そう考えたこともあります。無論、
心のどこかでは気づいておりました。
貴方がこの世にもう居ないと分かっていながらも
私がずっと貴方を慕い続け、
夢にまで見てしまうようになったのだと。


ですが、そう自覚するには、
あまりに耐えられないものでありました。


あなた
チシャさん。



だから私は、また、
都合のいいことで誤魔化すことにしました。

貴方が知れば、笑うでしょうか。
それとも軽蔑するでしょうか。
けれど、貴方はもう、この世のどこにもいないのです。
嫌われるかもしれないと私が恐れる相手は、
もうこの世にはいないのです。

チシャ・ゴールド
……


ねえ、だから、
貴方は化けて出てきてくれたのでしょう。

私が、貴方に気持ちを伝えるより前に、
貴方が姿を消してしまったから、
貴方は私を気の毒に思い、
夢の中まではるばるやって来てくれたのでしょう。


あなた
貴方を、心の底から
お慕いしておりました。

  ああ、どうか叶うなら、貴方に直接言いたかった。

言えば良かったのです。
どうでもいい羞恥心で心を誤魔化し、
貴方の知り合いとして過ごしたまま別れるくらいなら、
百回でも二百回でも言えばよかったのです。

しかしそう今更願っても、叶うはずもありません。
ですが、このままずるずると
貴方を夢でまで拘束することは許せませんでした。



知っているでしょう、私は馬鹿な女なのです。
やっと今日、貴方と本当にお別れする勇気ができた、
どうしようもない馬鹿な女なのです。

あなた
本当にごめんなさい。
あなた
わざわざ夢にまで出ていただいたのに、
こんなに時間がかかってしまいました。
あなた
どうか、こんな私を
許しては下さいませんか。

チシャ・ゴールド
許さない。

チシャ・ゴールド
そう、言って欲しいんでしょう。


その時、貴方は私へゆっくりと歩を進めました。
一歩。また一歩と私へ近づいて、
私の吐いた息が貴方にかかるくらいの距離になって
ようやく貴方は歩みを止めました。

あなた
夢の中までチシャさんって
素敵なんですね。なんでだろう…
チシャ・ゴールド
夢だからでは?


限りなく吐息に近い、
けれど確かな笑い声を私は聞きました。

私が貴方に目線を合わせようと顔を上げると、
貴方は骨ばった手のひらで
私の頬を撫でるものですから、
私は呼吸ひとつすら緊張したことを覚えています。


チシャ・ゴールド
ええ、許しませんなぁ。
チシャ・ゴールド
貴方の夢にも、
もう出ていってあげない次第。
チシャ・ゴールド
だから―――、


チシャ・ゴールド
あまり、一人で泣かないように。


貴方の指が私の涙をすくうのを見て、
私はようやく、自分が泣いていたことを悟りました。




  目が覚めると、いつも通りの寝室でした。
無論、貴方の姿はありません。
私がただ一人いるだけの、いつも通りの部屋です。

  ふと、部屋に置いてある鏡を見ました。
なぜだかはよく覚えておりません。
ただなんとなく、
見なければいけないと思いました。

あなた
………


涙の跡が、私の頬に張り付いていました。
しかしベッドに倒れ込むように寝たため、
布団に涙を擦りつけていたのかもしれません。
夢で貴方が拭ってくれた右側だけ、
涙の跡はありませんでした。
  偶然です。ただの偶然。
意味など、あるはずないのです。

しかし、私は貴方がいた証があったようで、
嬉しいのか、悲しいのか、また涙が出てきました。



私の涙を拭ってくれたのは、
夢の中のあの方だけで、
決して貴方ではないのでしょう。

あの方は、私が作り出した幻影です。
所詮、夢の存在なのです。




しかし、私は
夢の中のあの方にも恋をしておりました。

私の涙を拭ってくれた貴方のことも、
確かに私は愛していたのです。


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