_____ 時々。夢に、見る。
自己主張はそんなに激しくなくて、
ユリウスに尽くすことが
一番の幸せだと思っているような彼女が、
___ 顔を真っ赤にさせながら、告白してきた日のことを。
◇
やってしまった。
やってしまったやってしまったやってしまった。
勢いに任せて告白のような言葉を叫び、
彼の腕を掴んでから数秒。
段々と冷静になってきたのか
自分の行為を自覚して頭が真っ白になった。
ばか。ばかばかばかばかばかばかばか!!!
順序があるだろう、順序が。
女の子扱いしてくれる彼を
恋愛的に意識していなかったといえば嘘になるが、
それでもこんな告白をするつもりはなかった。
ただ引き留めて、連絡先を交換しようと
一声言うつもりだったはずなのに。
どうしてこんなことに。
私が呻き声のようなものをあげながら頭を抱えていると、
頭上から一滴の水が落ちてきた感覚がした。
雨でも降ってきたのだろうか。
私がゆっくり上を向くと、
理解の追いついていないような表情のまま、
ぼろぼろと涙を落とす彼の顔がそこにはあった。
私が慌てて彼から離れようとすると、
彼はその筋肉のついた腕で私を抱き締める。
「え」と言葉にできない声が漏れるものの、
彼は涙を溢れさせながら強く私を締め付けた。
思考は未だ混乱を極めているものの、
泣いているところを彼は見られたくないのかもしれない。
強く抱きしめられて少し苦しいけれど、
その圧迫感は不快ではなかった。
私は震える彼の背中に手を伸ばして、
できるだけ優しくさする。
彼が嫌なら申し訳ないが、
泣いている人がいれば優しくするのが信条だ。
私はただ、彼が泣き止むまで
ずっと彼の背中を撫で続けていた。
◇
それから数分が経って、
彼は落ち着き私から離れた後、
抱きしめられるときに掴まれた二の腕に
彼の手形の跡が付いていたことに気がついたらしい。
それから彼は先程の様子とは一変して、
ひどく慌てたように私の二の腕を冷やし始めた。
そう言いかけて、いつの間にか
ユリウスと彼を呼んでいたことに気がついた。
どうにも私は家名で呼ぶのが苦手なもので、
名前を呼ぶ方が好きなのだ。
しかし彼が不快になるなら辞めなければと
「すみません」と謝ると、
彼は下を向いて首を振った。
……確かに、彼も気がつけば敬語や敬称が外れていた。
だがそれに不快感はなく、私は勿論と了承を返す。
彼は少し黙って不思議そうな顔をしたあと、
私の言っている意味が分かったのか
口を開けて軽快に笑った。
少しの気まずさと痛みを覚えながら相槌をうつと、
彼は懐かしい記憶を慈しむように目を閉じて、
それから私の手を取った。
私が彼の言葉に理解が追いついていないのに、
彼は構わず言葉を続ける。
その表情には、安堵が滲んでいた。
彼は自嘲するように笑って、
それでも私の目を見て、言葉を紡ぐ。
なぜ、こんなことになっているのだろう。
先程泣いていた彼とは別人のように
私の手を取り笑う彼から、
なぜだか目を離せない。
全く私の記憶にはないが、
彼が嘘を言っているようには見えない。
私がそう妄言のようなものを口にすると、
彼はまた優しく微笑んだ。
どうやら彼は、私が彼を好きな気持ちよりずっと、
私のことが好きなようだ。
彼の記憶にある私がどんな感じか分からないが、
「まぁまた話せばいいか」と私も笑えてきて、
彼に腕を伸ばした。
生憎、ユリウス・ユークリウスの
最初の女も最後の女も私が独占するらしい。
オチを決めずに
書き始めるところがよくないんだと思いつつ、
「書くの楽しい!」の一心でまたやってしまいました。
毎回反省はしてるんです













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。