そんなこんなで彼女に
恋愛相談を聞いていただいている私であるが、
まぁ不出来な弟子だった。とんでもない不出来です。
彼女に何度ため息をつかれたことか分からない。
今夜も例に漏れず彼女は冷たい目で私を見下ろし、
「はぁ」とため息をついた。
ペシ、ペシと鞭の叩く音が響く。
彼女が手に叩きつけている音だ。
男は一度手に入れたモノには
少なからず執着を抱くわ。
彼女とのこの時間で、私にNOは許されなかった。
よって私はいつも元気よく返事をする。
返事だけはいいとよく褒められるのだ。
◇
そんなこんなで
「面白いことをやっているようだーあね」
と笑ったロズワール様に香水をつけていただき、
いつものように彼に差し入れに行ったのが
まぁ事件の始まりであった。
紅茶を持って彼の作業机に近づくと、
突然彼は顔を顰めて私を見上げる。
整った眉が歪められて、
なんだか嫌な雰囲気がした。
ラムさんから何を聞かれても
明確な返事はしないようにと言われていたから、
大好きな彼に本当のことを言わなかったのに。
彼は何も気にしていないかのように
書類に目線を戻してしまった。
今回も駄目だったら多分鞭が待っている。
っていうかあの鞭どこのやつだろ、
もしかしてスバルくんの愛用のかな……
……それはともかくとして、
痛い思いをするのは嫌だし、
彼にも少しくらい意識して欲しかったし。
傲慢なことだと分かっていても
そういう物は私の中に確かにあった。
ので。
と、口走ってしまったのであるけれども、
言った瞬間彼は先程よりもぐっと深く眉を歪めて
私のことを見上げるどころか椅子から立ち上がった。
香水をつけてもらっただけだけど。
彼女の言葉を思い出して
なんともはっきりしない言葉ばかり並べていると、
彼は「言えないようなことを?」と私に迫る。
あ、でも、もしかして、怒ってくれてる。
あるいは、嫉妬してくれてる?
男物の香水をつけてきたから、
彼が何か感情をあらわにしているのであれば、…
思わず口元を抑える。いけない。
口角が上がっていた。
彼はずんずん私に歩を進めてくる。
かくして、冒頭に戻る。
腰に回った手に、言葉になり損ねた
母音が口から漏れ出た。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。