前の話
一覧へ
次の話

第51話

# 「据え膳食わぬは」オットー夢
820
2026/04/02 16:41 更新


ラム
それで、何ならできるの?


そんなこんなで彼女に
恋愛相談を聞いていただいている私であるが、
まぁ不出来な弟子だった。とんでもない不出来です。

彼女に何度ため息をつかれたことか分からない。
今夜も例に漏れず彼女は冷たい目で私を見下ろし、
「はぁ」とため息をついた。

ラム
隣に座るのもぎこちない。
軽い指先のボディータッチも下手。
あなた
か……返す言葉もございません……
ラム
これ以上ラムの
貴重な時間を奪われる訳にはいかないの。


ペシ、ペシと鞭の叩く音が響く。
彼女が手に叩きつけている音だ。

ラム
いい? ラムに二言はない。
ラム
一度面倒を見ると決めたのだから、
貴方がどんな恋愛初心者のド下手くそでも
ラムが結果を出させる。
ラム
―――とっておきよ。


男は一度手に入れたモノには
少なからず執着を抱くわ。

ラム
男物の香水を纏うだけ。
それだけでいいわ。分かった?
あなた
はい!



彼女とのこの時間で、私にNOは許されなかった。
よって私はいつも元気よく返事をする。
返事だけはいいとよく褒められるのだ。






オットー・スーウェン
………ここに来る前、誰かと会いました?


そんなこんなで
「面白いことをやっているようだーあね」
と笑ったロズワール様に香水をつけていただき、
いつものように彼に差し入れに行ったのが
まぁ事件の始まりであった。

あなた
……え? あ、会いました。
どうかしましたか?

紅茶を持って彼の作業机に近づくと、
突然彼は顔を顰めて私を見上げる。

整った眉が歪められて、
なんだか嫌な雰囲気がした。


オットー・スーウェン
誰と?
あなた
ろ、………どうしてそんなこと?
オットー・スーウェン
…………いえ、確かにそうですね。
気にしないで、忘れてください。
あなた
( う、うそ! )


ラムさんから何を聞かれても
明確な返事はしないようにと言われていたから、
大好きな彼に本当のことを言わなかったのに。

彼は何も気にしていないかのように
書類に目線を戻してしまった。

あなた
( まずい…… )


今回も駄目だったら多分鞭が待っている。
っていうかあの鞭どこのやつだろ、
もしかしてスバルくんの愛用のかな……

  ……それはともかくとして、
痛い思いをするのは嫌だし、
彼にも少しくらい意識して欲しかったし。
傲慢なことだと分かっていても
そういう物は私の中に確かにあった。

  ので。


あなた
ろ、ロズワール様と会ってきました。
オットー・スーウェン
は?


と、口走ってしまったのであるけれども、
言った瞬間彼は先程よりもぐっと深く眉を歪めて
私のことを見上げるどころか椅子から立ち上がった。

オットー・スーウェン
何かされましたか。
あなた
え? えっと、………


香水をつけてもらっただけだけど。
彼女の言葉を思い出して
なんともはっきりしない言葉ばかり並べていると、
彼は「言えないようなことを?」と私に迫る。

あなた
………


あ、でも、もしかして、怒ってくれてる。
あるいは、嫉妬してくれてる?
男物の香水をつけてきたから、
彼が何か感情をあらわにしているのであれば、…




オットー・スーウェン
……………
オットー・スーウェン
……あなたさん、なんだか楽しそうですね?
あなた
えっ、



思わず口元を抑える。いけない。
口角が上がっていた。

オットー・スーウェン
…………ああ、はい。なるほど。
オットー・スーウェン
そうですよね。
辺境伯が手を出す訳なかった。
なるほど、そうですか。そういう…へえ、
オットー・スーウェン
商人相手に、よくもまぁ……
ナメられたものですね。


彼はずんずん私に歩を進めてくる。


あなた
あの、えっと、オットーさん、
違くて。ちがくて、その、あの、
オットー・スーウェン
ええ、なるほど、
よく分かりました。


かくして、冒頭に戻る。


オットー・スーウェン
それで、
オットー・スーウェン
弁明は以上でいいんですね?


腰に回った手に、言葉になり損ねた
母音が口から漏れ出た。

プリ小説オーディオドラマ