第57話

弱くてごめん
5,840
2020/03/02 14:00
なーくんには話したんだけど、夢を見たんだ
あの事件の夢
チェホが俺を殺そうとして、俺が······逆にね
ただでさえ俺嫌われてたのに、あのことでもっと最悪になってさ
周りはチェホが植物を使って暴れた本人って知らないから、ただ俺が女の子を殺したように思われてさ
それまでは俺に気づかれないように影で悪く言ってたのに、それからは堂々と周りで言われるようになって
貴族
やっぱりリイヌ王子は悪魔だわ
貴族
王子という立場で、自らの母だけでは飽き足らず、国民である少女を殺すなんて······
貴族
あの赤毛も血のようだし、なによりあの瞳······左右で色が違うなんて、あれこそ悪魔としての証拠でしょう
貴族
あぁ怖い······次は誰を殺すのかしら
なんともないフリしてたけど、やっぱり俺も辛くなってさ
あの時、俺が殺されていれば、俺が生まれなければ······って後悔ばっかりしてて
で、ある時、俺が壊れかけたことがあって
貴族
ほら、人殺しの悪魔よ
貴族
いやねぇ······人を殺しておいて、のうのうと生きていけるなんて考えられないわ
その時もいつも通りの悪口で。でも、最後の一言がきつくてさ······
貴族
本当に、あの人殺しの悪魔が生まれて来なければ、お母様も他の王子様達も国民も、みんな幸せだったのよ
貴族
あんな人殺し、早く死んでしまえばいいのに
俺、倒れそうになっちゃって
近くにいたジェルくんが支えてくれたんだけど···
そしたら、みんな俺がおかしい事に気づいてくれてさ
ルゥト
ルゥト
リイヌ、部屋行こ?
コロン
コロン
おいお前らかよ!!リイヌになんか言ったやつ!
貴族
こ、コロン王子···!
ジェル
ジェル
王族を傷つけたらどうなるか分かってんのか?
貴族
そんなつもりは···!
コロン
コロン
悪魔だ?馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ!
コロン
コロン
醜いのはどっちだよ!
部屋に戻りながら振り返った時、泣きながら叫んでるコロちゃんが見えてさ······
掴みかかりそうなコロちゃんを抑えながら、相手を睨んでるジェルくん
ナナモリ
ナナモリ
コロちゃん落ち着いて···
ナナモリ
ナナモリ
今後のここの出入り禁止···じゃぬるいか···
ナナモリ
ナナモリ
位を平民以下にして、どこの国にも滞在できないようにするか······
貴族
なっ······!
貴族
それだけはおやめ下さい!!
貴族
そんなことされたら私達、生きて行けません!!
ナナモリ
ナナモリ
それでも生きている人がいるんで大丈夫
ナナモリ
ナナモリ
衛兵!送り返しておあげ!
いつもは冷静なナーくんまで······
部屋に戻ってから、サトミくんが来て
サトミ
サトミ
リイヌ、動物捕まえてきた
リイヌ
リイヌ
!?!?
なんて言いながら庭にいた犬と猫とヤギと羊とハムスターと鳩持ってきてさぁ
流石に驚いたよね
んで、ルゥトくんはハムスターずっと持ってたし···
そうやって、俺のために色んなことしてくれたの嬉しくて······
あぁ、俺はこの人達のために産まれてきたんだ
俺がどうなろうと、この人達を必ず守ろう、って決めたんだ
リイヌ
リイヌ
なんて、長々と語ってると恥ずかしいね
リイヌ
リイヌ
そういう訳で、俺はこの現状に不満は持ってないし、むしろ嬉しいし満足してる
あなた

そう······だったんですね

ルゥト
ルゥト
リイヌ、そんな風に思って······
ルゥト
ルゥト
ごめんね······弱い家族で
ルゥト
ルゥト
家族1人守れない弱い人間で
リイヌ
リイヌ
だから、もう泣かないで!
リイヌ
リイヌ
それじゃ俺が守りたかったものが守れなくなっちゃう
ルゥト
ルゥト
え······?
リイヌ
リイヌ
家族の笑顔こそ、俺の宝物であり、原動力であり、守りたいもの
リイヌ
リイヌ
だからもう泣かない!はい泣くの終わり!
リイヌ
リイヌ
フェルも長々とごめんね
フェル
フェル
いえいえ!お話が聞けて良かったです
フェル
フェル
私も、家族の笑顔が1番だったので、よく分かります
フェル
フェル
ごめんなさい私、ななもり王子と話してきます
リイヌ
リイヌ
うん、いってらっしゃい
私はそそくさと部屋を出ていき、ドアを素早く閉めた
そして開いている部屋に入り、鍵を閉めた

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