第219話
Kiss × Death
あたしね、多分もうすぐ死んじゃうんだー。
この間だって、発作起こしたばっかりでさ。
滅多に行かない医者に行ったら、もう打つ手がないんだって。
そうやって笑って、煙草を吸う。
僕は煙草が苦手。
なんだかあの白い煙に、あなたの命が染み込んでる気がして。
ふわふわ消えてくあの煙と一緒に、あなたも消えていっちゃうんじゃないかって思うんだ。
🐻『どうするの?それで』
🐻『ここにいていいの?』
ここはラブホテル。勿論病人には相応しくない。
「だって死ぬんだもん。」
「最後まであんな臭くて白くて陰気臭いとこにはいたくないな」
なにそれ。
本当にあなたはわがままで、したくないことは絶対にしないし、行きたくないところには絶対に行かない。
「抱いてよ」
煙草を消すと、吸殻入れに放り込んでベッドに寝そべるあなた。
🐻『どうして?』
あなたに覆い被さる。
「最後はボムギュがいいから」
煙草の匂いのキス。
骨と皮しかないような腕と脚。
弱い心拍の音。
🐻『ほんとに死んじゃうよ…このままじゃ、』
「いいから抱いてよ」
あなたが壊れないように。
優しく、僕はあなたを抱いた。
身体を反らせて、苦しそうに喘ぐ姿を見ていると何故か涙が出てくる。
「げほ、っ………かはっ、」
騎乗位になった時、あなたが咳き込んで蹲った。
🐻『もうやめよう、』
🐻『血吐いてるから、』
「嫌、っ、続けて」
真っ白いあなたの腰つきを撫で、動きをリードしてあげると、あなたは柔らかく微笑んだ。
「あぁ、ボムギュが最後で良かった」
ぽた…と、僕のお腹に液体が零れる。
暗くてよく色は見えなくて、
それは唾液なのか血なのか、はたまた涙なのか______
🐻『………キスして、』
起き上がって、僕はあなたにキスをする。
煙草の匂い。
あぁ、よかった。
最後の吐息が、煙みたいに消えずに
僕の中に永遠に残るから。