翔太とはずーっと、友達で。
これからもそれは変わらないと思ってた。
当たり前みたいにそばにいて、これからも私に呆れながらも一緒にバカやって笑い合って……。
そうやって、過ごして行けると思ってた。
なのに。
……言っちゃった。
どうしよう、心臓がまだドキドキしてる。
まさか、翔太が私のことを好きなんて夢にも思わなかった。
いつもふざけて、一緒にバカやって……。
そんな関係がこれからもずーっと続いていくんだと思ってた。
〜涼真の部屋〜
学校からの帰り道も、頭の中は翔太のことでいっぱいだった。
合鍵を使って、涼真の部屋に入り、買ってきた食材を冷蔵庫に入れたあと
夜ご飯のハンバーグを作りながらも、やっぱり翔太のことを考えてる。
いつもなら、学校が終わってからずっと頭の中は涼真のことばかりなのに。
……私の中で、いつの間にかこんなにも大きく膨らんでしまった涼真への気持ち。
もう、誤魔化せないところまで来てる。
不意に見せる不器用な優しさだったり。
普段口が悪い分、たまに素直な気持ちを聞くと嬉しさが倍になったり。
テレビに出ている涼真を見て、本当の涼真はもっとあーなのに、こーなのにって思う時間も。
電話の向こうのいつもより少し低くて甘い声も。
疲れきってソファに寝落ちする横顔も。
翔太に告白されて改めて自分の気持ちを再確認した。
声に出してしまったら……アイドルを好きになってしまったら、そんなの自分が辛いだけだって思ってた。
だけど、このまま気持ちにフタをして涼真のそばに居るのは、きっともっとずっと
───苦しい。
って、いつの間にか翔太のことじゃなくて、涼真のことを考えている自分に苦笑する。
ボーッとしていたせいで玉ねぎと一緒に手まで切ってしまった私に、慌てて駆け寄ってくる涼真の姿……。
思わず、息をするのも忘れて駆け寄る涼真を見つめる。
不意に、後ろから抱きすくめられたかと思えば
私の手を取り、傷口を確認する涼真。
深い意味はないって分かってるのに
私の心臓は今にも張り裂けそうなくらいドキドキして、ギューっと軋んで……
泣いてしまいそうになる。
私の小さい変化にちゃんと気付いてくれる。
……涼真のそういうところが、本当に好き。
翔太に告白されたことを涼真に話したのは私なりの、恋の駆け引きだったんだと思う。
心のどこかで涼真に”断れ”って言われるのを待っていた。
ほんの少し、もしかしたら涼真も私のこと……そんな、淡い期待を抱いていた。
涼真の思わせぶりな優しさが本物だったら良かったのに。
まるで他人事のような涼真に涙も引けてしまった。
やっぱり、アイドルに恋をするなんて身の程知らずだったんだ。
こんなに近くに居るのに、きっと、この手が涼真に届く日は来ない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。