第6話

ヤキモチの始まりは
4,924
2019/07/06 04:09
無事、撮影が終わったのはなんと18時を過ぎた頃。
着せ替え人形のように、たくさん可愛い服を着せてもらったり、服に合わせてメイクを変えたり……。

モデルって、思ってた100倍大変な仕事だな。

……それなのに、涼真も楓くんもケロッとしてる。
きっと、慣れっこなんだろうけど。

すごいな……。
スタッフ
お疲れ〜!
紗和ちゃん、今日は本当にありがとうね!
紗和
紗和
あ、いえ!
お役に立てたか分かりませんが……
スタッフ
めっちゃ助かったよ!
全カット可愛く撮れててこりゃ選ぶのが大変だ!
紗和
紗和
……選ぶ、って?
スタッフ
もちろん、誌面に載せる写真だよ!
発売は来月の25日だからね
紗和
紗和
し、誌面!?
スタッフ
楽しみにしててね!
そうだ、これからみんなでディナーに行こう
今日のお礼にご馳走させて
紗和
紗和
あ、……はい
ありがとうございます
なんて、咄嗟に言っちゃったけど……。

ちょっと、待ってよ。
誌面なんて聞いてない!って、撮影ってことはそりゃ何かしらメディアに出て当たり前か。

……嘘、迂闊だった!!
ど、どうしよう〜〜。
〜レストラン〜
アットホームな雰囲気のレストランで、個室へと通された私たちは今日の撮影を振り返りながらレストランご自慢のコース料理を頬張っている。

コース料理とか初めてで、どうしたらいいのか全然分かんない。
楓
紗和ちゃん、全然食べてないじゃん
紗和
紗和
っ、あ……コース料理とか初めてで

ましてや、隣に大大大好きな楓がいるんだもん、緊張して味なんかしないよ。
楓
そんな緊張しないで
リラックスリラックス!
紗和
紗和
あ、ありがとうございます……!
楓
それにしても今日の涼真くん
紗和ちゃんのフォロー完璧だったね!
俺もフォローしようと思ってたのに
涼真くんが先回ってやっちゃうから
出番なかったな〜
楓
ね、2人って本当にいとこ?
紗和
紗和
……え!?
楓
実は付き合ってたりして
楓くんの言葉に、反対隣に座っている涼真が小さくむせる音がした。
紗和
紗和
つ、付き合ってるわけない!
本当に涼真とはいとこで……
紗和
紗和
えっと、私の母の……
お兄ちゃんの子どもが涼真なんです!
紗和
紗和
ね?涼真!!
涼真
涼真
あー、うん。
そうなんだよね
涼真
涼真
今日は無理矢理付き合わせたから
撮影中もずっと悪いなぁと思ってて
楓
へぇ、そうなんだ!
……てっきり涼真くんの
特別な子なのかと思ったのにな
紗和
紗和
それは、絶対ないです
紗和
紗和
あ、あの……実は私
ずっと前から楓くんことが大好きで!
紗和
紗和
今日こうして会えたのが
本当に夢みたいです……!!
楓
ほんとに?
ありがとう、すごい嬉しい
楓
大好き、なんて
面と向かって言われたの
意外と初めてかもしれない
紗和
紗和
え、あ!いや……
大ファンってことです!!
楓
一緒に撮影までした仲だし
連絡先、交換しよっか?
紗和
紗和
い、いいんですか……?
嬉しいです!
涼真
涼真
……ちっ
勢い余って、つい告白まがいなことしちゃった。は、恥ずかしい……。

でも、優しく笑って受け止めてくれる楓くんはやっぱり、超紳士!!

……てか、涼真のやつ。
今、舌打ちしなかった??
〜ディナーのあと〜
紗和
紗和
今思い出しても夢みたい……
やっぱ、楓くんかっこいいな〜
涼真の部屋で、日課の洗濯をしながら今日のことを思い出している私を、少し離れたソファから呆れたように見ていた涼真と不意に目が合う。
涼真
涼真
お前、あんなのがタイプなわけ?
紗和
紗和
優しくて、普段はかっこよくて
だけど笑った顔は可愛いくて……
涼真
涼真
どこがいいんだよ、あんなやつ
不機嫌そうに呟かれた言葉を不思議に思い、少し首を傾げる。

ソファから立ち上がった涼真が、ゆっくりと近づいてくるのをまるでスローモーションのように目で追えば、


───グイッ
涼真
涼真
絶対、俺のがいい男なのに
紗和
紗和
……っ!!!?
一瞬、ふわりと抱き寄せられた体は、そのまま涼真の腕の中に閉じ込められた。

突然のこと過ぎて、何が起きているのかなんて分からないまま……

離れていく涼真の熱に、戸惑う。
紗和
紗和
え……、涼真
い、今のって……なに?
涼真
涼真
明日早いからもう寝る
お前も、もう帰っていいから
紗和
紗和
ちょっ……!涼真!?
寝室へと入っていった涼真の後ろ姿が、目に焼き付いて離れない。

”絶対、俺のがいい男なのに”

囁かれた言葉、抱きしめられた時の涼真の体温。


……思い出すだけで、体がどんどん火照っていく。

どうしよう。
涼真相手に私、こんなにもドキドキしてる。

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