無事、撮影が終わったのはなんと18時を過ぎた頃。
着せ替え人形のように、たくさん可愛い服を着せてもらったり、服に合わせてメイクを変えたり……。
モデルって、思ってた100倍大変な仕事だな。
……それなのに、涼真も楓くんもケロッとしてる。
きっと、慣れっこなんだろうけど。
すごいな……。
なんて、咄嗟に言っちゃったけど……。
ちょっと、待ってよ。
誌面なんて聞いてない!って、撮影ってことはそりゃ何かしらメディアに出て当たり前か。
……嘘、迂闊だった!!
ど、どうしよう〜〜。
〜レストラン〜
アットホームな雰囲気のレストランで、個室へと通された私たちは今日の撮影を振り返りながらレストランご自慢のコース料理を頬張っている。
コース料理とか初めてで、どうしたらいいのか全然分かんない。
ましてや、隣に大大大好きな楓がいるんだもん、緊張して味なんかしないよ。
楓くんの言葉に、反対隣に座っている涼真が小さくむせる音がした。
勢い余って、つい告白まがいなことしちゃった。は、恥ずかしい……。
でも、優しく笑って受け止めてくれる楓くんはやっぱり、超紳士!!
……てか、涼真のやつ。
今、舌打ちしなかった??
〜ディナーのあと〜
涼真の部屋で、日課の洗濯をしながら今日のことを思い出している私を、少し離れたソファから呆れたように見ていた涼真と不意に目が合う。
不機嫌そうに呟かれた言葉を不思議に思い、少し首を傾げる。
ソファから立ち上がった涼真が、ゆっくりと近づいてくるのをまるでスローモーションのように目で追えば、
───グイッ
一瞬、ふわりと抱き寄せられた体は、そのまま涼真の腕の中に閉じ込められた。
突然のこと過ぎて、何が起きているのかなんて分からないまま……
離れていく涼真の熱に、戸惑う。
寝室へと入っていった涼真の後ろ姿が、目に焼き付いて離れない。
”絶対、俺のがいい男なのに”
囁かれた言葉、抱きしめられた時の涼真の体温。
……思い出すだけで、体がどんどん火照っていく。
どうしよう。
涼真相手に私、こんなにもドキドキしてる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。