結局、涼真には何も聞けないまま……。
学校にいても、昨日の涼真のことばかり考えてしまう。
あれは、どういう意味だったんだろう?
涼真のことだから、ふざけてあんなことするようなタイプじゃないことは分かってるけど。
……じゃあ、あれは一体。
考えれば考えるほど、迷宮入りしそうだ。
このうるさい男、立花翔太は
中学からの腐れ縁で、ずっと同じクラス。
ほんと笑っちゃうほど、一緒に過ごしてきた。
そんな、何かと気の合う男友達。
確かにココ最近、放課後は涼真のお世話係っていう仕事があったから、真っ直ぐ帰ってたし。
カラオケなんて、ずっと行ってない。
翔太と最後に遊びに行ったのいつだろ?
〜1時間後〜
何度も何度も確認してしまう涼真とのトーク画面。
私が送ったメッセージは既読がつかないまま。
……確か今日は、前々からドラマの撮影があるって言ってた日だっけ。
そうと決まれば……。
【今日はお世話係お休みするから!】
涼真とのLIMEのトーク画面でそれだけ打って送信ボタンを押した。
昨日のこともあって顔合わせづらいし、たまにはパーッと遊びに行ってやろう!
って、授業中だってのに涼真の心配ばっかり。
もうすっかり涼真のお世話係が板に付いてて、我ながら呆れて笑っちゃう。
嫌々始めたくせに、今じゃ少しだけ楽しいとか思い始めてる。
何より、家賃を払ってもらってることには、本当に感謝してるんだよね。
〜放課後〜
カバンを肩にかけて、翔太の席へ向かおうとした私はブレザーのポケットで震えるスマホに気付いた。
一方的に切られた電話。
ツーツーツー、と機械音が鼓膜を震わす。
なのに、私の顔はどんどん緩んで……
”涼真が心配して電話をくれた”
たったそれだけの事でこんなにも舞い上がる。
わざわざ撮影の合間に心配して電話くれたんだって思ったらギュッて胸が小さく軋んだ。
やっぱり、今日のところは真っ直ぐ帰って、涼真のためにご飯もお風呂でも用意しようかな。
予期せぬ翔太の言葉に、ドキッと効果音が飛び出た気がした。
頭をよぎるのは涼真の顔。
……違う違う!
涼真とはそんなんじゃないのに。
夕暮れの教室。
初めて見た翔太の真剣な顔と、夕陽に照らされて紅く染まる私の顔。
私、今……告白された!?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。