なぜかズカズカと私の部屋に上がり込んで、ルールを決めると言い出した神崎涼真にアタフタする。
だって、仮にもアイドルだよ!?
テレビで見る爽やかな笑顔なんて微塵も見られないけど、やっぱり本物のイケメンだ。
普段、学校で見てるクラスの男子とは悪いけどレベルが違いすぎる。
それが、自分の部屋にいるなんてあまりにも現実離れしてるんだもん。
やけにソワソワして落ち着かない。
確かに、うちの学校には芸能科ってのがあったっけ。
芸能人とかって、どこか雲の上の存在だと思ってたから
同じ学校に通ってるってことを今まであんまり意識したことがなかった。
棟も違うし、会うことなんてそりゃもう極めて少ないけれど。
そうか。
涼真みたいなイケメンや、桁外れの可愛い子が同じ敷地内にゴロゴロいるのか。
改めて考えると……恐ろしいところに入学してしまったらしい。
言ってる意味分かるな?と、私に尋ねる涼真に
コクコクと数回頷いてみせる。
こうして私たちの不思議な関係に、ルールが設定された。
〜数日後〜
私は今、猛烈に困っている。
涼真のお世話係を始めてからはや数日……。
俺様な涼真にイライラしながらも何とか家事をこなす日々。
が、しかし。早くも学校で遭遇してしまうかもしれないという大ピンチが訪れた。
と、言うのも親友の茉由佳が、学校に神崎涼真が来ていると言う噂を聞きつけて会いに行こう!と言い出したのが事のきっかけ。
ほんと、ミーハーなんだから!
数人の友人に囲まれて何やら楽しそうに笑っていた涼真は
茉由佳の声で、私たちに視線を向けた。
バチッと絡む視線……最悪すぎる。
申し訳なさそうな顔も上手。
さすがドラマにも引っ張りだこなだけあるわ……。
茉由佳はメロメロすぎて何を言ってもムダだろうけど。
フゥ、と小さくため息をついた私に、涼真が静かに近づいてくる音がして顔を上げれば
そのまま壁との間に挟まれて逃げ場を失った。
私の頭をひと撫でして、ニコリと王子様スマイルを繰り出す涼真。
それ見た茉由佳は”紳士〜!”なんてうっとりし出す始末。
……なにが、ゴミがついてたよ!!!
学校では他人だって、自分がルールまで作ったくせに。
小声とは言え素の状態で話しかけてくるなんて……!
どうしてだろう。
こんなやつ、ムカついて仕方ないのに。
───涼真が触れたところが、やけに熱い。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。