今日は日曜日。
休日はゆっくり眠る派の私を、まだ7時半すぎだというのに電話で叩き起した涼真を恨みつつ、
何とか布団という名のオアシスから抜け出した私は出かける準備をマッハで整え家を出た。
もちろん、……正直、なんで私が?って気持ち120パーセント。
だけど、涼真のお世話係になった以上、これも仕事と割り切るしかない。
だって家賃がかかってるんだもん!!!
頭の中はこんがらがってて、何が何だか理解する気力もない。
代わりを引き受けたって言った?誰が!?
私はただ涼真に呼ばれて来ただけで、モデルなんて無理に決まってるし!
それに、誰が涼真のいとこなのよ!?嘘ばっかり……!
……でもそれ以上に私の頭を混乱させてるのは、涼真の隣で優しく微笑む、モデルの松下楓(♂)!!!
私……実は、ずっと前から楓くんの大ファンなの!
私にだけ聞こえる声で放たれた言葉。
不意に意地悪く口角を上げる涼真に、ムッとする。
涼真のやつ、絶対私の反応見て面白がってる……!
本当、嫌ってくらい性格悪い!!
〜撮影中〜
9時から始まった撮影は思った以上に大変で、13時を過ぎた今やっとお昼休憩となった。
一般人の私には初めての連発で、いい経験にはなったけど
どうしようもない疲れが身体を支配している。
いい加減、笑顔が引きつってきてた頃だったから
……今回ばかりは涼真に助けられたな。
って、元はと言えば涼真のせいでこんなことしてるんだけど。
大好きな楓くんが目の前にいて、私に話しかけてくれてるって言うのに、それ以上に今、私の頭をいっぱいにしてるのは……涼真で。
今日の撮影を通して、さっきみたいに涼真の”目に見える優しさ”や”分かりにくい優しさ”に何度も触れた。
そんな優しさに触れる度、私の胸はトクン、トクンと音を立てて波打つ。
ねぇ、その優しさは、爽やか王子様アイドルの神崎涼真として?
それとも───。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!