隣の部屋の男の子のお世話係をすることになったなんて
パパとママになんて説明したらいいのか分からないし。
むしろ、説明したところでパパの心配性過保護スイッチをオンにするだけに決まってる。
契約書にサインした上に、もう引越しまで済ませてしまっている。……だけとお高い家賃は払えない。
かと言って、過保護すぎるパパから離れて、自由な高校ライフを満喫したい!って気持ちは変わらないし。
そのためには、パパが納得するセキュリティ万全のマンションが必要で……。
つまり、この条件を飲んで神崎涼真のお世話係になるのが最善の方法なのかもしれない。
私さえヘマしなければ、パパとママにはバレずに済む。
きっと素直に話したら、どんなに高くても他に良いところを見つけてくれるに違いないけど。
一人暮らししたいのは、私のわがままだから。
いくらでも家賃が安い部屋に住みたいってのが本音だ。
掃除、洗濯、料理はこう見えて得意分野だし、裁縫だって嫌いじゃない。
小さい頃からママの手伝いをしてきたのが、まさかこんなところで役に立つとは思いもしなかったけど。
もしかして、神崎涼真って天然!?
いや、極度のバカ……!?
一般人の女の子に家事全般を任せてるなんてスクープされたらファンのお怒りが……
って、その矛先は私に向けられたりする??
ちょっと待って、私のためにもこの関係……何が何でもバレちゃだめじゃん!!
トップシークレットだ、なんて言いながら
楽しそうに口元に弧を描く神崎涼真を見て、背筋にゾクッと冷たいものを感じる。
まさか私が、今をときめく人気アイドルのお世話係をすることになるなんて……!!
───あぁ。夢なら覚めて欲しいとはまさにこのことだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!