第2話

お世話係なんて聞いてない!
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2019/06/08 04:09
紗和
紗和
どうして私がアイドルのお世話係なんてやらなくちゃいけないの?
紗和
紗和
そんなのお断りだから!
隣の部屋の男の子のお世話係をすることになったなんて
パパとママになんて説明したらいいのか分からないし。

むしろ、説明したところでパパの心配性過保護スイッチをオンにするだけに決まってる。
涼真
涼真
そんなの、お前の部屋の残りの家賃を俺が払うからからに決まってんだろ?
涼真
涼真
こっちは大家ともそういう契約交わしてんだよ
紗和
紗和
の、残りの家賃って……
涼真
涼真
3万からはみ出す分は全部俺が払う
涼真
涼真
その代わり、お前はお世話係として俺に仕える
紗和
紗和
そ、そんなぁ……
涼真
涼真
お互い利害の一致だと思うけど?
紗和
紗和
ほ、他に家賃が安くてセキュリティ万全なマンションが見つかるかもしれないし!
探す間、少しだけ待ってくれない?
涼真
涼真
こんな格安で新しくて綺麗、おまけにセキュリティ万全な優良マンションが見つかるなんて、ほぼ無理だろ
紗和
紗和
うっ……
契約書にサインした上に、もう引越しまで済ませてしまっている。……だけとお高い家賃は払えない。

かと言って、過保護すぎるパパから離れて、自由な高校ライフを満喫したい!って気持ちは変わらないし。

そのためには、パパが納得するセキュリティ万全のマンションが必要で……。

つまり、この条件を飲んで神崎涼真のお世話係になるのが最善の方法なのかもしれない。
涼真
涼真
どうする?
涼真
涼真
俺のお世話係を引き付けて、格安で高級マンション暮らしを堪能するか
涼真
涼真
それとも、1から物件探しに飛び回るか……
ま、見つからねぇだろうけど
紗和
紗和
〜〜〜っ!!
紗和
紗和
わ、分かった!
お世話係やる……!
紗和
紗和
その代わり、家賃は……
涼真
涼真
フッ、そう来なくちゃな
紗和
紗和
あ、あと!
お世話係をすること、私の両親には内緒にしたいんだけど……
涼真
涼真
それは好きにすればいいだろ?
別に俺、お前の両親に会うことねぇし
紗和
紗和
……そ、そっか。分かった!
私さえヘマしなければ、パパとママにはバレずに済む。

きっと素直に話したら、どんなに高くても他に良いところを見つけてくれるに違いないけど。

一人暮らししたいのは、私のわがままだから。
いくらでも家賃が安い部屋に住みたいってのが本音だ。

掃除、洗濯、料理はこう見えて得意分野だし、裁縫だって嫌いじゃない。

小さい頃からママの手伝いをしてきたのが、まさかこんなところで役に立つとは思いもしなかったけど。
涼真
涼真
そういえばお前、名前は?
紗和
紗和
……私は黒川紗和
涼真
涼真
紗和、か
涼真
涼真
俺はご存知の通り、神崎涼真カンザキリョウマ
”nova”の一員として活動中のアイドル
涼真
涼真
アイドルの俺にとって一般人のお前は
現時点で信頼性に欠けまくる
涼真
涼真
ましてや今日初めて会ったわけだし
紗和
紗和
はぁ?いきなり部屋を訪ねてきて、
お世話係になれとかいう男の方が信頼性に欠けるんですけど!
涼真
涼真
俺はテレビにだって出てるし、身元は保証されてるだろ?
紗和
紗和
言ってること無茶苦茶すぎ……!
涼真
涼真
俺との関係はトップシークレットだ
……マネージャーも知らない
涼真
涼真
これは、大家と、俺と、お前
3人しか知らない極秘情報
涼真
涼真
もしマスコミに垂れ込んだりしたら
どうなるか分かってるよな?
紗和
紗和
ど、どうなるって……
涼真
涼真
俺が、家事能力ゼロのポンコツアイドルだってことが世間にバレるだろうが!
紗和
紗和
…………は?
紗和
紗和
なにそれ、そんなこと?
気にするとこ、もっと他にあるよね?
涼真
涼真
そんなこと……って。
これは、俺のメンツに関わる大問題だ
もしかして、神崎涼真って天然!?
いや、極度のバカ……!?

一般人の女の子に家事全般を任せてるなんてスクープされたらファンのお怒りが……

って、その矛先は私に向けられたりする??

ちょっと待って、私のためにもこの関係……何が何でもバレちゃだめじゃん!!
涼真
涼真
そこで、だ
涼真
涼真
お世話係を任せるにあたって
俺とお前のルールを決める
紗和
紗和
る、ルール?
トップシークレットだ、なんて言いながら
楽しそうに口元に弧を描く神崎涼真を見て、背筋にゾクッと冷たいものを感じる。


まさか私が、今をときめく人気アイドルのお世話係をすることになるなんて……!!


───あぁ。夢なら覚めて欲しいとはまさにこのことだ。

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